北海道での青春

紀行文を載せる予定

十勝連峰東部森林地帯・エピローグ

 「天候に恵まれ、目標としていたトムラウシ山登頂が、あっけなく達成されてしまった」という感がある。しかし、どんなすぐれた装備をしたパーティーでも、気象条件が悪ければ遭難ということもある。また、ちょっとしたアクシデントで、山行計画が中止になることもある。積雪期の山では、雪と斜面があれば、基本的にどこでも雪崩の危険性はあるだろうし、誰かが、スキー滑降中に転んで、運悪く捻挫や骨折にでもなれば、「担架用橇」を作って、下山させなければならなくなるだろう。それらの可能性は、常に自覚しながら、もっと厳しさを期待し、冬山を登頂したかったと感じるのは、やはり若さだったろうと思う。

 残念なことに、この山行の記録写真が一枚もない。同じ年度の山行の写真はあるので、カメラは持っていたはずだが、予備山行のものも無い。映像で記録しておこうという意識が薄かった。その代わり、森林地帯の印象は、今でも強く残っていて、頭の中で描くことができる。

 しかし、他の人に状況を紹介しようとするには、記録写真は欠かせないし、残念な思いはいつまでも残る。前年の秋に、母と妹が札幌を訪ねてきた時、市内や近郊を案内して記念撮影をしたが、一枚も撮れていなかった。知床の海を泳いだ時、カメラに海水が入り、壊れたのかもしれない。その直後のことだった。もう40年もたった今でも、『せっかく行ったのに、思い出の写真がない』とぼやかれる。

 

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ニペソツ山(トムラウシ山の東・両者の間が、十勝川源流)

 【編集後記】 今回で、「十勝連峰東部森林地帯」を山スキーで歩き、トムラウシ山を登頂した山行の紀行文を終えます。本文にもあるように、記録した写真がないので、最後に他の機会にトムラウシ山を訪ねた時、スケッチした夏山の様子を紹介します。

 今ならGPS機能を完備したカメラで撮影すれば、緯度・経度・標高・カメラの向いている方向・もちろん日時(秒単位)までわかるような手段もあります。一緒に地質調査に行った若い大学院生が持っていたカメラの性能を教えてもらい、びっくりしました。