北海道での青春

紀行文を載せる予定

恩返し感覚

  毎年、松本税務署の出前講座・租税教室を依頼し、6年生は、税金の果たす役割について学習している。税金の徴収・配分される仕組みの概説後、消費税が話題になり、世界各国の比較で、日本の5%が低いことに驚く。それは、税制度が国によって違い、日本では様々な方法で課税・徴収しているので低率だという。それでも4兆円で、もし1万円の札束を横に並べれば、長野県の東西幅(約200km)にもなると聞き、札束の連なる光景を想像して、再び驚くのである。話題のひとつに「一年間の小学生一人当たりの国税支出額』があって、約40万円だと知った。
 正月6日、次年度本城小学校管理予算を村教育委員会と検討した折り、総額を児童数で割ると、40万円強となった。だが待てよ。県職員の人件費が含まれていないことに気づき、試算してみると、児童一人当たり、優に百万円を越えた。学校が維持管理され、学校での教育や生活が、健全に営まれる為には、驚くほど多額の先行投資を受けていることになるのだ。かつて、山行に出かけた私たちは、学費を講義数で割り、損出金額を話題にしたことがあったが、大学の運営経費まで知れば、莫大な損失だと、今、改めて気づいた。 
 ところで、卒業生の学びの6年間も、私たちの社会生活も、一緒に視聴した児童向けVTRアニメ『もし、税金がなければ』の説明通りなのだと思うが、金銭だけでは割り切れない、心情面での支えと、それに応える心構えも、忘れてはならない。
 『水を飲む時には、井戸を掘った人のことを忘れない。(中国の諺)』のように、今の恩恵に感謝すると共に、先人の苦労をねぎらい、これからの自分が、お世話になった人々や社会に対して、どんな役割を果たしながら、貢献していけば良いかを考え、それを実践していくことは、とても大切なことだと思う。
 私事になるが、小学校卒業文集に『国連大使になり、世界平和(ベトナム戦争盛んな頃)に貢献したい』と書いた。中学校の卒業文集では、『世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない(宮澤賢治の言葉)』と書いたことを思い出したが、私自身のその後の人生の歩みを振り返れば、ひたすら汗顔の至りである。
 だが、卒業生の先人として、皆さんの語る大いなる夢や志を聞くことは実に楽しい。その時、個人の幸せ追求はもちろんだが、心底に自分を支えてくれた人々や社会への『恩返し』という、やや古びて聞こえるが、大切な感覚を覚えておいて欲しいと思う。いつの日か、皆さんとの笑顔での再会を楽しみにしています。
 ご卒業おめでとう。

 

  【忙中閑話】     消費税について思うこと

 令和元年の10月から、一部、軽減税率の商品等もあるが、消費税率が10%となった。
さすがに、買い物をする時、概算した定価の合計に、消費税分だけ高くなることを予測して、財布の中身に余裕を持たせておかないと不安になる。
 何度も経験があるわけではないが、海外旅行に出かけたホテル内のお店で飲食した時、消費税とサービス料金が加算されるので、かなり不安になった。慣れない通貨の勘定な上に、当時の日本と比べると破格の消費税率で、格好悪いなあとは思いつつ、密かに電卓で計算した思い出もある。
 大学生の頃、自炊していたので、近くのスーパーへ買い物にでかけることが多かったが、白髪の男性の老人が、電卓で計算しながら、商品を買い物籠に入れているのを見たことがある。『俺も、あのくらいの年齢になった時、こんなふうにしているのかなあ』と思った。年金暮らしでつましく生活している訳ではなく、単に几帳面な方だったのかもしれないが、商品を手で持ったり戻したりしていたので、少し気の毒に感じた次第である。
 ところで、消費税は、昭和時代の終わり頃から常に話題に挙がり、導入しようとすると選挙で敗退しそうになっては、延期されてきた。そして、世界の政治・経済的にも大きな変革期となった平成元年の4月、竹下 登 内閣の時に、税率3%として発足した。
 それから、4%(平成6年11月)、5%(平成9年4月)、8%(平成26年4月)と、上昇してきた。翌年には10%になる予定が、安倍晋三内閣の踏ん張りで、しばらく延び延びとなり、ついに令和元年(2019年)10月から、実施された。
 令和元年から2年にかけては、新型コロナウイルス感染の世界的な大流行(Pandemic)とも相まって、国民生活は、とんでもないことになっている。それでも、この文章を書いていられる自分は、質素な生活者とは言え、十分に幸せな部類だと感謝している。

 消費税に関して、You―Tube情報(及川幸久氏)で、以下のようなことを知った。
平成2年(1990年)と令和元年(2019年)の日本国の税収の内訳の概要である。
資料は、【税金収入全額】(内訳:所得税法人税/消費税の順番)
 平成2年は、【60.1兆円】(26.0兆円/18.4兆円/*4.6兆円)である。
 令和元年は、【62.5兆円】(19.9兆円/12.9兆円/19.4兆円)である。
アスタリスク「*」を敢えて、金額の桁を合わせる為に入れたが、差が大きいことに気づくであろう。
 国家の予算規模は、平成2年と令和元年で、もちろん違うが、税金による収入は、ほぼ60兆円で近い数字である。それで、内訳を百分率で比較してみると、約30年の間に、消費税の占める割合が、極めて大きくなっていることがわかる。(下の資料)
 ○所得税収入:43.3% →31.8% (-11.5%)
 ○法人税収入:30.6% →20.6% (-10.0%)
 ○消費税収入: 7.7% →31.0% (+23.3%)
つまり、国債による収入も含めた上での国家予算ではあるが、こと、税金による収入という観点では、今や消費税がなくては、ならない存在になってしまっている。私は、この消費税率を上げろとも、下げろとも言うつもりは、毛頭ない。国が国として成り立っていくには、取り敢えず、現状を容認しなければ始まらない。
 しかし、社会的なインフラ整備や、少なくとも生活水準が上がってきているのに、所得(所得税収入)が伸びないどころか、減っている点については、どこか根本的で、社会構造的な仕組みが良くない方向に進んでいるのではないかと思い、改善して欲しい。
(聞きかじった知識はあるが、ここでは触れない。)
 

 【編集後記】

 「忙中閑話」は、最近になって付け加えた内容である。一日も早く、世界全体がコロナ禍から抜け出して、少しは不安の薄れた世界で住みたいものだと願う。同時に、少し私のエゴで、『日本ファースト』ではあるが、世界経済が一斉に弱り、何んとか次のステージに向かって動き出す時代を迎えざるを得ないはずだが、これが日本にとってチャンスとなればいいなあと願う。平成時代は、日本社会にとって、概ね平和ではあったが、大きな自然災害と経済的苦しみが続いた。それ故に、令和に希望を繋ぎたい。

 オリンピックにも・・・・『瑠璃色の 五輪待つ空 燕交う』

                  (おとんとろ)