北海道での青春

紀行文を載せる予定

微化石から人類へ(恐竜絶滅後の世界)

10.巨大隕石落下で恐竜が絶滅した後の世界

 生物大量絶滅は何度かあり、2.1億年前の三畳紀ジュラ紀の境(Tr-J境界)も、そのひとつです。超大陸パンゲアの分裂が始まり、激しい火山活動が原因とされる。また、少なくとも大規模な5個の連鎖クレーターの落下も加わり、大きな気候変動を引き起こしたと考えられている。

 北米カナダ、ケベック州マニクアガン・クレーター(Manicouagan crater)は、そのひとつで直径100kmのきれいな円形をしている。現在はダム湖の一部となり、流れ出した水は、セント・ローレンス川につながる。
 単弓類(哺乳類型恐竜)の完全絶滅、大型恐竜の絶滅(小型が残り、再び巨大化した)、アンモナイト類の多くの種も絶滅している。

 

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マニクアガン・クレーター

 

 そして、6550万年前の白亜紀と古第三紀の境(K-Pg境界)でも、大量絶滅があり、生物種の70%が消えた。特に、恐竜は全滅した。

 これは、メキシコ・ユカタン半島に直径10~15kmの隕石(衝撃規模で第3位)が、落下したからだ。チクシュルーブ・クレーター(Chicxulub crater)(直径160km、一部海底)の存在が確認されている。ボーリング調査や物理実験結果からの推理で、生物大量絶滅のシナリオが作られた。それらを見ると、身の毛がよだつ。

 

【短期的変化】

(ア)1000km以内は、即死。  (イ)直接光が見えた範囲は、熱放射で焼死。

(ウ)地球のどこにいても、津波と洪水で溺死。 (エ)岩屑の突風でなぎ倒される。

(オ)その他、土砂崩れ、火災、事故、食料不足など、様々な理由で死。

【長期的変化】

(カ) 砂塵で太陽光が遮られ、「核の冬」→植物は生き残ったとしても枯れる。

(キ)何千年(?)と続く寒冷化・・・(ク)その後は、CO2 の増加による温暖化

 

 ところで、最近、落下地点の地質は石灰岩や石膏が多く、衝突によって成分が蒸発して三酸化硫黄(SO3)になり、大量の酸性雨を降らせたことも一因とする考えが発表されている。

 ①上述のシナリオで、海のプランクトンなら生存率がもう少し高そうだが、海洋の酸性化に敏感な「石灰質ナノプランクトン」が、種の80%以上で絶滅した。

 ②陸上の方が絶滅率が高く、淡水中と海底では絶滅率が低かった。

 ③衝突直後のしばらくは酸に強いシダ植物が繁茂した。強い酸性雨と海の酸性化があったのではないかと説明しています。

 

 インドのデカン高原には、白亜紀末の火山噴火で噴出した玄武岩溶岩が広がり、溶岩台地を形成しています。その規模は、ペルム紀末のシベリアで起きた噴出量に及ばないものの、割れ目噴火は、玄武岩の溶岩洪水となり、多量の火山ガスやCO2を放出し、温室効果から温暖化を進めた。巨大隕石の衝突と共に、生物大量絶滅の原因だと考えられています。

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デカン高原玄武岩溶岩層

 三畳紀末と白亜紀末の2度の大量絶滅を経て、偶然にも生き残った仲間の世界が展開します。恐竜のいなくなった世界には、恐ろしい生物が君臨しました。

 【ディアトリマ・Diatryma】という体重200kgもある巨大な肉食性の鳥です。孤立していたのか、アジア地域では、代わりに【ハイエノドント・Hyaenodont】という小型肉食哺乳類が繁栄しました。

 やがて、陸峡を通じて交流できるようになると、小型でも集団で狩りをする哺乳類は、古第三紀・始新世までに、巨大鳥を滅ぼしてしまいました。

 

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ディアトリマの想像図


 【編集後記】
  本文では、メキシコ・ユカタン半島に巨大な隕石が落下した年代(白亜紀と古第三紀の境・K-Pg境界)を6550万年前としましたが、現在は、6600万年前とした方が良さそうです。

 地質年代は、主に動物(植物も加わるが)の進化を中心に比較・対比され、命名されてきた地層を元に導かれた時代区分に、放射性同位元素の半減期などを活用した絶対年代が後から加わって、できています。しかし、研究の進展に伴い、時代と共に修正されてきました。その中でも、白亜紀と古第三紀との境は、6500万年前というのが不変な数字でした。それが、6550万年前と少し古くなりました。そして、2019年(令和元年)5月の国際層序委員会で、6600万年前とされるようになりました。

 ちなみに、白亜紀の最後の時代「マーストリヒティアン期」と、古第三紀の最初の時代「ダニアン期」の名称は、変わりません。