北海道での青春

紀行文を載せる予定

微化石から人類へ(高い視力の獲得)

11.人類は高い視力を獲得した

 【図1】は、新生代の貝殻化石中に含まれる酸素の同位体「酸素16と酸素18の存在比、18O/16O」を調べ、相対的に示したグラフです。貝が生きていた当時の海水温の様子が、わかります。
 元々、温暖だった白亜紀から、生物大量絶滅後の温度上昇期(暁新世後期)を最高値として、古第三紀は気温低下が進み、新第三紀は横ばい、そして、第四紀の急速な寒冷化(氷河期の存在)というのが、新生代の地球全体の気温変化の推移です。

 全体的に見れば、現世より温暖な気候ですが、3300万年前(漸新世)の急速な寒冷化は人類の祖先・霊長類の生活に大きな影響を与えました。豊かな植生が衰え、果実などの餌が見つけにくくなりました。

 南極大陸が現在の位置に近づき、冷たい周極流が寒冷化の原因でした。

 

f:id:otontoro:20200630112939j:plain

新生代の海水温変化(気候変動)

 これに対して、視力を高めるような進化が、既に起きていました。
 霊長類(サル目)・真猿類の【カトピテクス・Catopithecus】の化石が、サハラ砂漠で発見されました。頭蓋骨の破片から『眼窩後壁(がんかこうへき)』と呼ばれる骨が見つかります。これは、視神経が集中するフォベア(Fovea・中心窩)を常に正面に向けて固定する為に必要な構造で、ものをはっきりと見るために不可欠です。この機能を、始新世後期には身につけていました。

 この機能により、果実などが乏しくなる食料事情の中で、効率良く餌を見つけることができ、生き延びることができました。

 

f:id:otontoro:20200630113225j:plain

ゴリラの眼

 

 真猿類には表情があります。

 顔の表情筋が発達し、喜怒哀楽の気持ちが相手に伝わるように進化しました。視力の発達により、違いがわかったのでしょう。

 さらに、ヒトには「白目」の部分が顕著です。狩りの時のアイ・コンタクトの必要から進化したと言われます。コミュニケーション能力のひとつです。秩序ある社会生活をめざしたヒトへの進化の道のりの始まりです。

 

f:id:otontoro:20200630113410g:plain

ヒトの表情筋

 


 【 忙中閑話 】

 私たちは、ふだん正式な生物分類名で呼ばずに、仲間やグループのことを「類」という言い方をすることが多いので、曖昧なことが多いです。
 例えば、『人類』という時、どの範囲までのことを意図して使っているのか? 
 私たち「ヒト・Homo sapiens sapiens」は、動物界・哺乳綱・サル目(=霊長類or目)・ヒト科・ヒト属・ヒト(種)であるので、ホモ(科)・サピエンス(属)・サピエンス(種)となります。

 一方、遺伝子の解析から、ヒトとチンパンジーは、共通の先祖から分かれたとされます。それで、「ヒト亜科」と「チンパンジー亜科」という分類もあります。(ちなみに、チンパンジー亜科は、ゴリラなど類人猿から、オランウータンを除いたグループです。)だから、人類とは、ヒト亜科とも言えます。
 絶滅したものも含めると、20以上の人類がいたと言う。

 

f:id:otontoro:20200630113614j:plain

現在のチンパンジー

 【編集後記】

 かなり前の『動物の不思議な行動』という題で載せた私のブログに、野良猫と私の目(視線)が合った話題がある。少し長いので、要約する。中学1年生の春休みに、飼育していた伝書鳩を野良猫が襲って殺してしまった事件である。

 二階の自室から雄鳩(♂)が電線に留まっているのが見えた。優秀な雌鳩(♀)は既に巣に戻っているはずだと思いながら、宿題をしていて鳩のことを忘れかけていた頃、鳩舎の方で激しい羽ばたきと、物がぶつかる音がした。何事かと、私は小屋に駆けつけると、雌鳩(♀)の白い胸毛から血が流れていた。そして、傍らに猫がいた。

 猫は、私に気づいて顔を向けた。非常に顔の大きな猫だった。この瞬間、私はどんな事件が起きていたのか、一応の理解ができた。そして、猫の顔の中の目と、私の視線が合った。猫の目は、恐怖と驚きの目のようにも見えた。完全なる沈黙と、全ての物が静止したような一瞬の刻(とき)が流れ、次の瞬間、猫は巣箱の中を恐ろしい勢いで回り始めた。巣の板塀に、何度も激しく体当たりをした。そして、最後はトラップに頭からぶつかるようにして突っ込んで、アルミニウム製のフレームをねじり曲げて逃走した。その後で、私の目からは涙があふれ出て、それから大きく息を吸い込んだ後で、ようやく泣き声が出てきた。

 野良猫の目と遭遇した時、その時点での私の目は、憎悪や敵意に満ちたものでは、決してなかったと思う。何が起きたかは理解したが、ただ驚いて、もっと様々な情報を得ようとして観察している目だった。だが、その目に対して、猫は異常過ぎるほどの反応を示した。
 人の目、「目」というものは、諺(ことわざ)通り、多くのことを物語るものなのだろうか。人間は、目の中に、慈愛や好奇心、好意なども感じ取ることができるが、野生動物には、敵意や恐怖心しか、本能的に嗅ぎ取れないものなのかなあと思った。

 (略) そんな我々人類も、将来、もし、未知の宇宙生物と遭遇した時、彼らの目らしきものを見て、どんな反応をするだろうか。案外、野生生物と同じような気持ちになって、出会うことはないだろうか。

 そんな「まとめ」をしたが、確かに人は丁寧な言葉よりも、その人の表情や仕草を身読み取って真意を知ることができる。反対に、その原理を理解できるずる知性と言うより寧ろ、ずる賢さがある故に、人を騙すし、反対に騙されてしまうことも多いのだろう。