北海道での青春

紀行文を載せる予定

秋の花三題(長月の句)

① ほほで触れ 偲ぶ若き日 吾亦紅(われもこう)

② 背伸びして 朝日を仰ぐ 紫苑(しおん)かな

③ 快気祝い 風がかけゆく 水引草(みずひきそう)

 


 「暑さ寒さも彼岸まで」とは蓋し名言で、朝の最低気温から日中の最高気温まで、生活の中で快適と感じる温度変化である。

 今月の句会では、秋の草花三題を詠んでみようと思う。

 

 【俳句-①】は、山で吾亦紅(ワレモコウ)を見つけた時、青春の日の高原でのデートを思い出して詠んだ。

 高校生の時、蓼科山の大河原峠をChさんと歩いた。彼女は、後に大学で漢方の勉強をするので草花に興味があったのか、『吾亦紅って、バラ科なの』と、私に説明してくれた。そして、吾亦紅が、好きだと言う。小さな花が集まって、ツクシのような格好をしているが、実はこの赤い部分も萼(ガク)で、華やかな薔薇(バラ)の仲間とは思えない。だが、全体は素朴で、和やかな風情がある。

 地質調査で山に入った時、当時のことを思い出して、花(先端)を指で触れてみた。
 これに対して、女性3人の3様の反応があった。
①「乳頭を触れてるみたいで嫌らしさが滲みでる」と家内、
②「目の見えない人が指感覚で見ているみたい」とSさん、
③「指より頬(ほほ)で触れた方が情感が伝わる」とYさん。

 3人の指摘があり、触れるのは指から頬になったが、男の作った俳句では、頬だと少し気恥ずかしい気もする。

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吾亦紅の花



【俳句-②】は、朝刊を持ちに外に出て、既に日の出は過ぎていたが、紫苑が群れて生えている姿に、はつらつとして前向きな生気が感じられて詠んだ。
 庭の2箇所に紫苑の群生が、私の子供の頃からずっとある。お墓参りの時には、数本切って持参した花であり、一輪挿しにさせば花束になったりする。キク科の多年草である。様々な理由で、特に草本類は移植されて絶えてしまったり、新しい園芸種に押されながらも、地下茎が歴史を伝えてきた。

 薄紫色の紫苑の花は、すっきりとして素敵だが、それを支える枝葉が必要以上に大きく丈夫である。丈夫過ぎるので、大事にしてこなかった感もあり、殖えすぎないように本数を調節していた。しかし、朝日の中で見た紫苑は、今までの思いと違って見えた。背丈は十分高いのに、更に伸びようと、まるで向上する為に何かを求めて背伸びする姿に感動した。

 

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紫苑の群生

 【俳句-③】は、花の付き方の形状が、水引の赤(慶事)に似ていることから、植物名となっているが、そんな「うんちく」から思い付き、俳句を創作してみた。

 水引草は、正式には「ミズヒキ」で、タデ科イヌタデ属の多年草である。我が家の庭にもあって、微風にも揺れて、交叉する様が水引を掛けたように見える。
 「快気祝い」としたのは、少し事情もある。昨年が大病とすると、今年は小病になるが、今年の夏も膀胱癌の手術で、お墓参りができなかった。幸い、肺癌の転移ということではないようなので安心した。前後合わせて一週間の入院だった。
 それで、自分でも元気になるようにと願いを込めた。
 ところで、水引草は、花を楽しむというより、全体の花の並びが絵になる。素人が生け花をしても、他の花を適当に生けても、水引草が加わると風情が増すような気がする。こういう脇役の草花も、いいものである。

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水引草を使った生け花

 

【編集後記】

 ちょうど今の季節が、三年前の俳句を詠んだ時期と重なった。一方、現実の世界は、コロナ禍が拡大し、マスコミでは大都市や全国が話題になるが、我が長野県では急増していて、佐久地方でも警戒レベルが上がった。

 農作業を一人、畑でしている私には、あまり深刻に迫る事態ではないが、それでも、たまには買い物に出るので、他所の話と割り切れない。

 ところで、ブログの内容では、あまり政治的な話題は歓迎されないかもしれないが、昨日の安倍晋三首相の辞任表明は、残念です。任期中に憲法改正まで期待していました、しかし、「安倍体制・トランプ体制」が、後任者に移ることがあったにせよ、中国共産党に対する防衛と、積極的国防の手順は明確にできる方針を望んでいます。