北海道での青春

紀行文を載せる予定

天候不順の夏(文月の句)

① 天地(あめつち)の メール交換 梅雨長し 

② 孫会いに 爺じ白靴(しろぐつ) 高速道 

③ 炎(ほむろ)立つ 癒えし畑に 雹(ひょう)の傷跡(あと)

 

 7月の句会は、暑気払いを兼ねて、小諸菱野温泉の「きのこの森」・懐石料理「ふうわ家」で開催された。今月は、長引く梅雨空と自然界のサイクルに乱れが生じていることを俳句に詠んでみた。

 

 【俳句-①】は、例年にない降水量の多さと長びく梅雨を、迷惑な長電話ならぬ、くどいメール交換に例えて、自然界の営みを皮肉って詠んだものである。

 大学生時代を過ごした北海道から、教員になって赴任した故郷長野県へ戻った。初任地のY中学校で迎えた梅雨は、極めて新鮮に感じられた。日本の季節は、四季(春夏秋冬)だけでなく、盛夏の前と後の「梅雨と秋雨(秋霖)」を加えて、六季あると言われる。北海道には、梅雨期が無いので、その存在を思い出させてくれた。

 しかし、今年は、その時の梅雨の懐かしさとは完全に反対の気持ちになっている。 夏の炎天下の水不足に備え、適度な降水がなければならないことはわかるが、今年の長雨には閉口した。そろそろ天と地が交渉して、互いに我慢しつつ妥結して欲しいものである。

 

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梅雨前線のできる頃


 【俳句-②】は、老夫婦が都会に住む孫を、少し「おめかし」をして訪ねていく様を詠んだ。

 平日の高速自動車道のSAやPAに降りると、私たち夫婦ぐらいの世代が多い。実年齢は不明で、想像するしかないが、やぼったい雰囲気のおじいさんという人から、反対に異様な若作りをした老人まで、かなり幅広い人々と会う。また、高速自動車道を利用するのも、様々な目的からだろう。

 そんな中、私(爺じと呼ばれるようになり)は、夏期に、白ズボンに合わせて白靴を履くことにしている。普段の農作業用のゴム長靴から、大転換であり、道行く「爺じ」の中で、少し洒落者と見えているのではないかと私なりに解釈して、気取っているのだ。孫に会いに行くのは、極めて特別な日常でもある。

 

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白い靴


 【俳句-3】は、梅雨明けの炎天下で、雹(ひょう)被害に逢った畑が、再生した喜びと共に、忌まわしい傷跡を発見した時の感慨を詠んだものです。 

 令和元年6月18日の夕刻、私の住む地域に雹を伴う雷雨がありました。 
 私の経験では、平成10年夏、家族で日本海(新潟県西山町石地海岸)へ海水浴に行き、その帰路、上越道自動車で激しい雷雨に遭ったのが、これまで私が経験した最も激しい豪雨との遭遇でした。土砂降りの雨で前が見えず、路肩に車を寄せて徐行し、何とか近くのSAにたどり着きました。
 しかし、雹を伴う雷雨は、それ以上でした。自宅にいましたが、降るという表現より、俗に言う「バケツの水をひっくり返した」ような状態が、無数のバケツで行われていた感じです。20分ほどあったのが、せめてもの救いでした。

 雹に打たれて、その後に枯れてしまった野菜と、逞しく復活した野菜と、分かれました。全体的には、作柄は減少しました。
 けれども、その後の野菜の復活状況をみると、「生命」のたくましさを実感しました。

 

【編集後記】

 最近、「50~100年に1度」という形容詞の付いた異常気象が観測される。私は、50年は生きているが、まだ100年にはならないものの、ここ10年ほどの間に、生まれてからの最高気温、最高積雪、最高雨量などを体験している。具体的・科学的根拠があるわけではないが、感覚的に異常な気象状況となっている。この令和元年に続き、今年(令和2年)も梅雨の長雨と日照不足で、野菜が順調に育たなかった。

 ところで、本文中の雹被害だが、どの辺りが被害が大きいのか、歩いて観察できる範囲を調べてみた。すると、東西幅500m以内で、南北に長さ2kmほどの片貝川筋に沿った範囲に集中していることがわかった。良く話題に挙がる「線上降帯」の小規模なもののようにも思える。多分、雷雲の最も激しい部分が、南から北へ移動して行ったのだと思う。

 水田地帯なので、野菜畑や果樹栽培の畑は少なく、ほとんどが水田である。稲は、「蛙の面に小便」ではないが、固体の雹がぶつかっても稲の葉は、痛くも痒くもなく、被害は皆無であった。多少の水が付いても、元々水に生えているので影響は無い。大昔から連作しているのに、その障害も発生しない。まさに、日本という風水害に適した植物だと実感した。

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乳房雲(佐久市内山の所沢での観察)

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乳房雲(インターネット資料)

  上の写真は、平成13年(2001年)8月4日の正午(昼食時)に山の中で写した「乳房雲」です。大規模なものは、竜巻や積乱雲の近くに発生するようですが、それらの激しい上昇気流の影響で、下降気流や渦流ができて、こんな珍しい、下向きにふくらんで、乳房が垂れたような珍しい雲になるようです。

 ちなみに、私たちの調査していた場所では晴れていましたが、多分、群馬県側では雷雲が発達していたのかもしれません。