北海道での青春

紀行文を載せる予定

秋の虫三題(長月の句)

① 夜を尽くし 閻魔蟋蟀(えんまこおろぎ) 鳴き飽かぬ

② 風音に 追い越されてや おにやんま

③ 淡き恋 番蜻蛉(つがいとんぼ)を 君と見し 

 

 防災の日に始まる9月は台風シーズンでもあり、今年は台風15号が首都圏を襲い、特に房総半島で大きな被害を被った。(この後、10月の台風19号では、もっとすごいことになる。)

 ふたつの祝日を挟んだ3連休に加えて、中秋の名月や、東京五輪ラソン選考レース(MGC)の楽しみも多かったが、孫が川崎病の診断を受けて入院し、家内が応援に駆けつける等、大変な月だった。

 当初、赤とんぼ(アキアカネ)を含む蜻蛉三題に挑戦したが、後述する「閻魔蟋蟀」に感動して置き換えたので、今月の題は『秋の虫』としてみた。

 

 【俳句-①】は、夜は完全に明けているのに、エンマコオロギの雄(♂)が雌(♀)を求めて、鳴いている実態を知ったことに、感動して詠んだ。

 床に就いた後、秋の虫の音を聴きながら寝入るのは、風情がある。ところが、日は高く昇った時間帯でも、しつこく鳴いていたので、その実態に驚きもしたが、少々呆れた気がしてきたからである。

 虫が鳴く、正確には前翅を擦り合せた時の振動音だが、求愛の為の行動である。人間なら一晩中、女性に言い寄っているか、愛をささやき合っているという状況になる。それが、暗い時間帯だけでなく、白昼にも恋愛が続くことになる。

 それで、そんな意味を込めて、『夜を尽くし 閻魔の恋は 鳴き飽かぬ』と、私は創作した。

 しかし、「閻魔の恋」ではわからないと、会員から指摘を受けた。そこで、閻魔蟋蟀(えんまこほろぎ)としたが、少し未練がある。

 

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閻魔大王の恋?

 

 【俳句-②】は、風を切る音が聞こえて、振り返ろうとすると、オニヤンマが、私を追い抜いていった時の驚きと、蜻蛉の魅力に感動して詠んだ。

 農作業中に黒い鳥が隼(ハヤブサ)のように、(一度、実際に聞いたことがある・・)音を立てて落下したので、駆けて行き片貝川に着水した川鵜(カワウ)を発見して驚いたことがある。これに対して、オニヤンマの風切音は、物理的にそれほど大きくないが、それでも近くを飛行するので確実に聞こえた。

 アキアカネなどの群れを成す蜻蛉群も風物詩だが、一匹のオニヤンマが悠々として飛び過ぎる光景は、胸の空く思いがする。どこか、古生代石炭紀のシダ植物や種子シダ植物の森を飛ぶ大型蜻蛉の再来のような感動を覚えるからだ。

 

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石炭紀の森 (想像図)

 

 【俳句-③】は、番蜻蛉を見ると青春時代のデートの時の一場面を思い出して、その懐かしさから詠んでみた。

 高校生の時、ある女性と交際していたが、デート場所は高原とか山とか自然の中がほとんどで、街中では、公園か神社仏閣だった。二人とも繁華街や喫茶店でというような趣味がなかったからである。少々、変わった二人だったかもしれない。

 この場面は、貞祥寺の座禅堂で座禅をした後、八方観という佐久平が見渡せる高台に登り、何げない会話をした時のこと。
 『○○くん、結婚して子供は何人ぐらいがいい?』彼女が、突然、聞いてきた。家族計画で子供の人数が多い方が良いか否かということを話題にしていた場面である。
 『子供はたくさん欲しいな』と彼女は言う。偶然にも、そこへ番蜻蛉(交尾中のトンボ)が飛んできた。二人ともトンボが何をしているかわかっているものの、静かに眺めていた。

 ・・・彼女との年賀状交換は、半世紀を経た今でも続いているので、その後の情報も入るのだが、子供さんは多いようだ。

 

【編集後記】

 小学5年生から中学1年生の頃、Uコン(ユート・コントロール)のガソリンエンジン飛行機遊びに凝ったことがある。リモコン(リモート・コントロール)の飛行機は、高価なので子どもの小遣いでは手が出ない。

 エンジンは、シリンダーが数CCにも満たない小さなものだが、ガソリンを燃料とする内燃機関なので、本物の爆発音が響く。それを扱う少年たちは、ちょっとしたエンジニア気取りであった。(時代も、科学技術者を養成しようとする雰囲気があった。)

 Uコン飛行機は、小学校の校庭のような広場で飛ばす。エンジンを始動させ、飛行機が加速して離陸すると、ワイヤー・ロープで繋がれているので、円軌道を描いて飛行する。手元の細いワイヤーの調節で、主翼の昇降舵(しょうこうだ)が動き、機首が上がったり下がったりしながら旋回する。原理的には、空中回転もできるはずだが、壊しそうでやったことはない。

 十分に楽しいのだが、悲しいかな、離陸と着陸、飛行高度を変えることはできるが、自由には飛べない。・・・・それで、中学1年生の夏、物々交換で、飛行機から伝書鳩飼育に、遊びというか趣味は変わっていった。(以前のブログ「動物の不思議な行動」に詳しい。)

              *  *  *

 さて、前置きが長くなったが、もう少し安価で、しかもポプュラーだったのが、紙と竹でできた模型飛行機である。動力は、ゴムを使い、木製かプラスチック製のプロペラを回して飛ぶ。これなら、組み立ては、多少、親に手伝ってもらうことはあっても、小学生2年生ぐらいになれば、操作は簡単なので、上級生の仲間に入って一緒に遊べる。私も、小学2年生ぐらいで、デビューした。

 今、思い出しても不思議なのは、この模型飛行機を使った遊びが、毎年のように繰り返されるものの、きまって秋の一時期なのである。夏は夏の、冬は冬の別の遊びがある。

 それは、赤蜻蛉(アキアカネ)が、高い山から里へ降りてきて、人々の目に触れるようになると、始まる。そして、アカトンボが居なくなると、飛行機遊びをする子どももいなくなる。今、思い出すと、とても不思議な気がする。

 

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アカトンボの飛び交う秋空には模型飛行機が似合う

 赤蜻蛉を見かけるようになり、半世紀以上も昔のことになるが、ふと、何かの機会に買った組み立て式の模型飛行機を見つけたので、作ってみようかなと思った。もし、孫でも秋にやってくれば、さっそく実行に移し、一緒に遊ぶかもしれない。