北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語(三山層-6)

8. 三山層堆積構造のまとめ

 「ラミナが教えてくれたこと(第1章)」で紹介した、①私たちのフィールド・ネームで「ストライプ層準」や級化層理・ラミナ(葉理)、本章(第6章)で取り上げた、②フレーム現象や粘板岩の礫の位置、そして、前回紹介した、③層内滑りや混濁流堆積物などの証拠から、三山層の特徴が見えてきます。

 現在の分布を見ると、偶然にも、白亜系全体の「南に大きく傾いた向斜構造」の軸部に三山層は、分布しています。現在の方向で、南北方向からの大きな圧力(厳密には、南からの衝上する力か?)により、褶曲構造ができています。そして、その後、主に南北方向の断層により、地塊が移動していると思われます。

 また、上記の①~③のような特徴により、概ね東西に延びた堆積盆の北翼と南翼の対応の関係や概要が、実地踏査により確認することができました。。

 山中地域白亜系の東部地域(群馬県側~秩父地方)で、三山層は深海成の厚い黒色頁岩層が発達しています。一方、佐久地域では、いくぶん事情が異なります。混濁流堆積物などの証拠から、三山層は、浅海~大陸棚斜面のような堆積環境であったのではないかと考えられます。
 また、三山層の層厚や分布から、少なくとも石堂層堆積盆の広がりを越えることはなく、さらに、都沢では瀬林層上部層を欠いて下部層を覆っていたり、県境付近には分布していないことから、東部地域とは一部隔離されていたか、十分な連絡がなかった可能性も高いと思います。

 三山層は、さらに西端へ、どう変化していくのでしょう。層厚が薄れていくことは予想できますが、次の章で、言及したいと思います。 

 

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山中地域白亜系・佐久側の地質図(1997年版)

 【編集後記】

 地質図は、この後、内山層の調査を受けて、修正されていきますが、白亜系についての大局では変わっていません。

 ただし、「三山層-4」で紹介した大野沢最上流部での、瀬林層と三山層、及び、乙女ノ滝断層の関係(既に、地質図で示してある)所は、大きな縮尺の地質図では表せないので、拡大して表示しました。注意してください。

 また、四方原山(よもっぱら)の安山岩質溶岩などは、初期の頃は確認した沢の標高から、ほぼ等高線に沿って分布を示した経緯もありますが、調査が不十分なので、この図ではいっさい記入してありません。未調査の「蛇紋岩帯と白井層(?の印)」の調査と共に、いつかやろうと思いながら、とうとうできませんでした。

 それでも、いつか皆で行ってみようと、希望を繋いでおきます。 (おとんとろ)