北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語(地史―1)

  山中地域の地史


 自分の生活している地域の大地が、どんな歴史をもっているのかという問いは、人々の根源的な問題で、とても興味深いことです。
 かつての世界の人々は、洋の東西を問わず、「天地創造の物語」や「神話」などを創作して、自分たちの民族や、さらには国家の起源と、その歴史を、子孫へと伝えてきました。

 例えば、日本國にあっては、「古事記」や「日本書紀」は、科学性という観点からは、もちろん限界があって当然ですが、真実であるかどうかより、人々の先祖への畏敬の念や、営々と営まれる社会へのある種の願い等が感じられます。為政者の宣伝だと批判する人も中にはいますが、我が民族、国家(国民)のアイデンティテイ(identity)を語ってくれているという安心感もあると思います。

 また、日本には、「琉球の神話」や「アイヌの神話」もあります。有名ではなくとも、地方や小地域の民話の類の中にも、自分たちのルーツや歴史を語ってくれているものもあります。

 ここで注意しなければならないことは、内容が非科学的だとか、排他的だとか、場合によっては、宗教・文化の違いから自分たちと真逆だという理由で、無視したり軽蔑したりてしまうことでしょう。どの民族や地域・国家にとっても、誇りと尊厳のある部分なので、互いに尊重し合う態度は、忘れてはいけないと思います。

 その点、これから話題にする地質学的歴史「地史」については、そんな心配はいりませんが、その代わり科学的事実や証拠に立脚しているかが問われます。それだけが議論の対象となります。

 しかし、ここにも大きな盲点かつ、落とし穴があります。それは、科学のもつ後発性の有利さです。その時代の科学的常識から見て、十分に確からしいことも、それから未来の別な発見によって、間違っていたということが、いくつもありました。1912年(明治45年=大正元年)にアルフレート・ウェゲナー(Alfred Wegener)が発表した「大陸移動(漂移)説」などは、その最たるものです。
 さらに、地質学的分野でも、特に地史に関する内容は、推理・想像・創造する部分が、かなりあります。真実はひとつでも、それを、どう科学的に解釈したかという違いによるものなのでしょうか。いくつかの学説があります。

 以下に、専門家の方の発表内容や、インターネット情報などから、まとめた内容を紹介します。しかし、前述の理由で、永遠に真実とは限らないことを承知の上で、見てください。
 さらに、山中地域白亜系の内容は、素人の私たちの見解ですので、さらに疑い深く見ていただいた方がいいかもしれません。

 


1. アジア大陸は、どんな風に変遷してきたか

 

 約5.4億年前(カンブリア紀始まり)の海で、生物が爆発的に増えた。

オルドビス紀(4.85~4.43億年前)になると、大陸は、少しずつ集まり、反対に超海洋パンサラッサは拡大した。大陸は南極域にあり、短期間であるが大陸氷河が発達した。

 オルドビス紀には、海洋生物種の85%が絶滅した。絶滅は、氷床が発達した海水準低下時と、氷河の消滅による海水準上昇時らしい。海中で爆発的に増加した有毒金属(鉛・ヒ素・鉄など)が原因だった可能性があるとする説もある。

 アジアは赤道付近に、細かく分かれてある。

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オルドビス紀 (約4億5000万年前)


 シルル紀(4.43~4.19億年前)になると、初期はロレンシア大陸・バルチカ大陸・シベリア大陸に分かれていたが、後期には、ロレンシア大陸とバルチカ大陸が衝突して、ユーラメリカ大陸になっていった。
 生物の海から陸上への進出が始まり、陸に棲息する節足動物や最古の陸上植物が出現した。シルル紀後期に「リグニン」のある植物が登場し、それを分解できる微生物がいなかったので、植物は腐りにくいまま地表に蓄えられていった

 アジア大陸(中朝古陸)となる部分は、赤道付近にある。

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シルル紀(約4億3000万年前)

 デボン紀(4.19~3.58億年前)になると、下図では、まだ合体していないが、ユーラメリカ大陸とシベリア大陸・アジア大陸が集まって、ローラシア大陸になっていった。
 衝突による巨大山脈が、大気の流れを大きく遮り、恒常的な降雨を陸上にもたらしていた。それで、大きな河川ができ、動植物が大陸内部まで侵入してきた。昆虫類・両生類も増えたが、魚類の種類や進化の豊かさから、「魚の時代」とも呼ばれている。
 アジア大陸は、赤道からいくぶん北上した。

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デボン紀(約4億年前)

 

 石炭紀(3.589~2.989億年前)になると、大陸は、ローラシア大陸ゴンドワナ大陸に大きく二分されるようになりました。間の海は、テーチス海と呼ばれます。(後に、ゴンドワナ大陸が分裂し、インド大陸が移動しながら衝突し、テーチス海に堆積した地層を褶曲させてヒマラヤ山脈を造ります。また、石油の埋蔵地帯とも重なります。)

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石炭紀~ (約3億5000万年前~)

 

 二畳紀(2.989~2.541億年前)になると、2つの大陸は合体して、超大陸パンゲア大陸となっていきます。

 二畳紀ペルム紀)から三畳紀(2.541~2.013億年前)にかけての、約1億年間は、少しずつ姿を変えながらもパンゲア大陸が存在していました。

 約2.5億年前は、古生代中生代の境目(P/T境界)で、全地球生物種の95%が絶滅したと言われます。生物大量絶滅の原因は、大規模な火山噴火による急激な気候変動と、大気中の酸素濃度の減少だろうと推測されています。火山ガスや二酸化炭素に加え、メタンハイグレートが解けてメタンが増え、温室効果から気温も上昇しました。
 アジア大陸は、現在の緯度辺りに近づいています。

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二畳紀三畳紀(約3億年前~2億年前)

 

  【編集後記】

 先に「編集の形式は、本の体裁で第9章で終わる」と紹介しましたが、元原稿は、第12章までありました。後の方は、新しい時代や、八ヶ岳・浅間火山に関するものでした。

 本文の書き出しで述べたように、この地史に関しては、どうしても創作的な要素が入ってしまうので、その理由で、素人がおこがましいと、第10章を没にしていましたが、地質調査物語という「読み物」だからと思い直し、復活させました。それで、5日ほど書き写しに時間を要しました。

 使用した図版は、インターネットからの情報ですが、本当の出典はわかりません。多分、外国の論文(英文)からのものに、日本語で注釈を付けたものだと思います。

 ところで、今日(令和3年3月28日)は、明日(29日)にかけて「満月」となります。米国では、先住民や入植者たちが満月を生活暦のようにして呼んでいたようで、『Worm  Moon (土から虫が出てくる頃の満月) / Sap Moon(メイプルの樹液が出てくる頃の満月)』などと言うようだ。日本の二十四節季みたいなものに匹敵する。

 満月と言えば、西行法師(出家前は、佐藤義清(さとう・のりきよ)という武士)の有名な和歌を思い出す。

願わくは 花の下にて 春死なん その如月の 望月の頃

 如月は、2月のことだが、旧暦だと現行のグレゴリオ暦より一ヶ月ぐらい遅れているので、3月の満月の時期となって、今晩の満月の頃となる。信州では、櫻の花の下という訳にはいかないが、梅の花なら可能になる。

 こんな話題を長々としてきたのには、理由がある。

それは、本文にも登場してきたアルフレート・ウェーゲナー(Afred Lothar Wegener )の誕生日と亡くなった日のことが、印象深かったからである。

 誕生日は、1880年(明治13年)11月1日。亡くなったのは、気象学者の業績から更に地球物理学者・地質学者として、大陸移動説の証拠を求めて、グリーンランドを探索中の、1930年(昭和5年)11月2日または3日と言われる。同島への5回目の踏査中の過労死・心臓発作と推定されている。命を掛けて自分の学説の証明に真摯に向き合う姿勢は、私になどとても真似ができない。

 尊敬する科学者であると共に、誕生日と亡くなった日がほぼ同じ、そして、なぜか私の誕生日と重なるので、生没年を見た時に強く印象に残った。

 世界中で蔓延している新型コロナ・ウイルスでの死、そして、ミヤンマーでの「国軍記念日・昭和20年3月27日に抗日武装蜂起し日に因む」デモ隊の射殺事件を今朝のニュースで改めて知った。悲惨である。それ以上に腹立たしい。ただ、具体的には何もできない自分だなあと思う。このところ日課になりつつある、近くの鐘楼に登り、鐘を三回突きながら、冥福を祈ろうと思う。(おとんとろ)