北海道での青春

紀行文を載せる予定

春の風(弥生の句)

       令和3年3月の俳句

 

① 春一番 パシュートの如 群れ雀

② 強風も 地吹雪無きは 佐久の幸(よさ)

③ 白き嶺 山紫を残し 霞けり

 

 令和2年度最後の「みゆき会(句会)」は、新型コロナ・ウイルス感染者数が減ってきたので、2月分も併せて、3月17日に開催することとなった。
 農閑期は、ほぼ毎日、60分間程度の散歩を日課にしているが、「3月の題材はないかな?」と思いながら歩いていたら、何とか見つかった。
 題して、春の風三題である。


 【俳句-①】は、春の疾風が吹いてくると、木の枝に留まっていた雀の群れが、一斉に同じ方向に飛び立ち、途中で突然向きを一斉に変えて飛んで行った様子が、スピードスケートの団体パシュート競技を見ているようで感動した様を詠んだ。

 春の強風なので、春疾風(はるはやて)が、季語でも良いかなと思ったが、パシュート競技を連想したので、第一位・優勝をイメージして、「春一番」の季語にしてみた。

 ちなみに気象用語としての春一番は、春先に吹く南寄り(ESE~WSW)の強風のことである。気温が上昇して本格的な春の陽気となるが、その後で寒さが戻ることが多い。これを「寒の戻り」と言うようだ。季語には、春一番しか無いが、春二番~春三番もある。
 ところで、【写真】の平昌(ピョンチャン)冬季五輪大会、女子団体パシュート・日本チームの優勝シーンは良く覚えている。高木奈邦・美帆姉妹、佐藤綾乃選手に、準決勝戦では北相木村出身の菊池彩花選手も加わった。ベンチから応援の押切美沙紀さんの涙にも共感し、感動した。
 小平奈緖選手の500m優勝と、韓国・李相花(イ・サンファ)選手を慰める名場面もあった。2010年、カナダ・バンクーバー冬季五輪大会では、小平選手もパシュートで準優勝したメンバーの一人だった。全てが、とても懐かしい。

 群れ雀に感動したという俳句なのだが、本音は、自分でも幼少の頃から滑ってきたスピードスケートが好きで、しかも、団体パシュートでの優勝や会見場面が、あまりに印象的だったので、こんな俳句となったのかもしれない。

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パシュート(2018年・平昌冬季五輪)

 


 【俳句-②】は、非常に強い冬型気圧配置で、東北地方や北海道に、暴風雪・大雪・波浪警報などが発令されていた日にも、散歩にでかけたが、佐久平では地吹雪が無い分だけ幸せかと、心境を詠んだものである。

 前線を伴った低気圧は、日本海からオホーツク海に抜けて、発達し、爆弾低気圧となった。等圧線の詰まった日本列島は、荒れに荒れた。目出帽とまでの重装備ではなかったが、厳重な身支度で、冬田道へ午後の散歩にでた。あまりの強風で、吸う方も、吐き出す方も、とにかく息継ぎができない。目尻から涙も吹き飛ばされる。

 学生時代、冬山は何度も経験しているので、強風で雪が吹き付ける吹雪の激しさは知っている。ただ、「ホワイト・アウト」して、視界が効かなくなるような状況下では、テントの中で停滞日を過ごしていたので、地吹雪の体験は無い。

 『佐久地方でさえ台風並の強風なので、積雪のある北国では、吹雪や地吹雪に苦しんでいるだろうな』と慮る。どんなに強風でも、風だけで雪の伴わない佐久地方は、ありがたい、良い所だと思った。私は、寒いのは、我慢できます。

 【写真】は、小諸市飯縄山公園(富士見城)山頂から北アルプスを眺め、望遠レンズで槍ヶ岳をズーム・アップ、PC加工したものです。この時期の晴れた日には、雪のある地域の山々が良く見えます。

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北アルプス槍ヶ岳の遠望(小諸市飯綱山公園から)

 


 【俳句-③】は、冬から早春の頃までは、遠くの白い嶺が良く見えていたのに、いつしか冠雪も薄れて、近くの山並と紛れ、見え難くなっている。春霞の中で、ぼんやりとしている山の変容を詠んでみた。

 農閑期は、佐久の冬田道で散歩をしている。北に浅間山、東に荒船山、南東に茂来山から関東山地、南西に八ヶ岳連峰が見える。
 北西方向には、北アルプス穂高岳槍ヶ岳から、鹿島槍ヶ岳、白馬岳方面が見えている。

 ところが、浅間山から稜線を志賀高原の根古岳まで辿り、そこから低くなっていく先に、雲とも見まがえる白い嶺がある。

 良く晴れた日に確かめると、NNW方向にある雪山だとわかった。ちょうど、千曲川が北へと流れ下っていく方向が低くなっていて、北信五岳(戸隠山飯綱山黒姫山斑尾山妙高山)のひとつが見えているのだろう。白き嶺は、新潟県境に近い豪雪地帯の山でもある。
 北信地方に暮らしたことがあるので、特徴的な山容の妙高山(2454mASL)でないことは確かである。

 高気圧が日本列島を覆った2月最後の日に、白き嶺の正体を突き止めるべく、いつもの散歩道より、少し標高の高い所から観察してみることにした。
【下の写真】は、佐久市青沼から撮影したものである。白い建物は、故郷創生事業で建てられた旧臼田町の「コスモ・タワー」である。

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白き峰の正体(佐久市青沼から)


 その後で、コスモ・タワーのある稲荷山に登った。北アルプス日本海側に白馬岳方面が見え、もう少し北を見ると、【写真―下】のような白い嶺がふたつ見えた。
 ギザギザした稜線の特徴から、左側の山は戸隠山(1904mASL)だろう。それより北東側にあって、やや標高が高い山となると、黒姫山(2053mASL)ということになるかなと、推理した。飯綱山(1917mASL)では、手前の山に隠されてしまうだろう。

 ところで、日よって、見えたり見えなかったする小さな白い嶺を、毎日の散歩で楽しみにしていた。歩く方向によって正面となる浅間・八ヶ岳(蓼科)・北アルプスの山々を見るのも、胸の透く思いがする。しかし、見え隠れする白い嶺も、気に懸かる。
 ♯MeToo時代に、下世話な例えで、顰蹙(ひんしゅく)を買いそうだが、北アルプスは、スタイルも抜群な女優さんが水着姿となっているようで、見ていて飽きない。一方、小さな白い嶺は、女子高校生が自転車ペタルを漕いでいて、スカート丈から、白い脛や太ももが現れるような感じである。少し気が引けて、堂々と見られないが、見たいようでもあり、男心をくすぐる。山の名前が「黒姫」らしいとわかったが、神秘性は少しも薄れない。

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戸隠山(左)と黒姫山(右)の遠望(佐久市臼田・稲荷山公園から)

【編集後記】

 令和2年度の俳句が、3月(弥生)の句で終了した。これで、5月中旬頃までに、会員の一年間の俳句をまとめ、印刷して、令和2年度の俳句集にする予定である。

 ところで、その前に大仕事がある。

 5月連休に開催される薬師堂の花祭り(一月遅れ)に掲げる「奉灯俳句」の額を用意しなければならない。載せる奉灯句もさることながら、俳画のアイディアも練らないといけない。

 昨年の私の句は、『瑠璃色の 五輪待つ空 燕交ふ』で、俳画には、地元の浅間山を背景に、咲き誇るアヤメを描いた。

 なんとか、東京五輪パラリンピックができますようにという願いからだったが、今年は、そのことをもっと祈ったものにしようと思う。密かに、画題を考えてはいるが、やや難しいかなと心配もしている。

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 奉燈句の方は、なんとかできたが、あまり良い出来映えと思っていない。自分でも、そう思うくらいなので、先輩諸氏からは、選句されないだろうな。

 それでも、平成28年5月に入会してから、5年間も続けてこられたことに、少しは自信をもって、更なる精進をしていこうと思います。(おとんとろ)