北海道での青春

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佐久の地質調査物語-107

第Ⅱ章 コングロ・ダイクとは何か?

 

 第Ⅰ章で「コングロ・ダイク」を研究課題にした経緯と、内山川水系・釜の沢から西側の沢(釜の沢左股沢~ホド窪沢~八重蒔沢ほか)のルートマップなど基礎データを紹介しました。

 まだ、内山層の模式地である「柳沢~大沼沢」の様子を紹介してありませんが、まずは、大規模なコングロ・ダイクを中心に、産状の概要を説明しようと思います。

 

『コングロ・ダイク』とは、その産状の特徴をもじって、私たちが調査用に名付けた フィールド・ネームで、正式な地学用語ではありません。

 礫岩(コングロメレイト・conglomerate)が、火成岩の岩脈(ダイク・dyke or dike)のように、堆積岩(主に黒色泥岩)から成る地層に対して、非調和的に貫入しているように見える異常堆積構造のことです。

 このコングロ・ダイクが、内山層で頻繁に観察されます。

 

 

1.延びるコングロ・ダイク

 【写真-1】と【写真-2】は、内山川の支流・ホド窪沢の標高1020m付近で見られるコングロ・ダイクの産状を示しています。(説明図を参照)

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【写真―1】ホド窪沢・標高1020m付近

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【写真―2】同じ露頭を上流側(南側)から見た

黒色泥岩層の層理面に対して、礫岩ブロックが直交するように貫入しています。泥岩層の走向・傾斜は、N75°E・10°Sと、ほぼ東西に延び、南側に緩く傾斜しています。これに対して、コングロ・ダイクの走向・傾斜は、N20°W・85°Wで、ほぼ南北方向に近く、垂直に泥岩層を切っています。
 地層の走向・傾斜イメージがつかみにくい人は、食パンの耳の長い方を東西の向きに、何枚か重ねたサンドイッチパンを想像してください。これに南北方向から包丁を垂直に入れた時の、包丁に相当するものが、コングロ・ダイクに当たります。

 礫岩層ブロックの「厚さ25cm×長さ15m以上」にわたって分布する産状をみれば、コングロ・ダイクが地下へもある程度の広がりをもった板状(層状)のものだと考えても良いと思います。しかも、黒色泥岩との境目がシャープである点は、形成された活動が、無理なく速やかに行なわれたことを意味しているように思われます。

 

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【説明図】コングロ・ダイクと周囲の黒色泥岩層の関係

 

 【編集後記】

 「はてなブログ」では、ホド窪沢のルートマップによる地質概要の説明に続き、2回目登場(【写真―2】)ですが、【写真―1】の方は、初登場です。

 しかし、これまで、地質研修会の資料や、会報「佐久教育」などのコングロ・ダイクの紹介する記事では、何度も掲載してきた写真です。(この露頭は、もちろん、今でもありますが、表面が汚くなったり、周囲の枝木が伸びたりして、こんなに綺麗には確認できません。) ちなみに、手前の長靴は小林正昇さん、奥は唐沢 茂 さんのものです。露頭写真だけより、人物も一緒だと、少し調査の雰囲気を伝えられるかもしれません。

 ところで、今回は、この露頭の話題だけです。まったく私的ながら、農作業も始まってきていて、特に、蒔きもの(種蒔きした野菜)への水遣りが日課となってきたので、多少、忙し目な日々が始まりつつあります。(おとんとろ)