北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語-128

 ○雨川水系

4. 西武道沢の調査から

 森林地図では、「西武道と東武道」は尾根の中央を境に区分されている地名ですが、西側の沢を西武道沢、東側の沢を東武道沢と呼ぶことにしました。尚、東武道沢には入っていません。ここでは、内山層の下部層から上部層が見られました。(下図【西武道沢~林道・東山線付近のルートマップ】を参照)

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西武道沢のルートマップ(東武道沢や林道大沼線と兼用)

 平成15年9月6日、西武道沢に懸かる榊橋(さかきばし)から沢に入りました。最初の露頭(【図-①】)は、熱変質して灰色になった細粒砂岩層でした。黄鉄鉱(pyrite)が含まれ、走向・傾斜は、N80°E・5°S~水平でした。
 標高1000m付近(【図-②】)は、熱変質した灰白色泥岩層で、表面はすべすべしています。ノジュールが3個ありました。熱変質を受けた時、暗灰色砂岩は灰色になるのに対して、黒色泥岩は明るい灰白色になります。

 そのすぐ上流には、薄い凝灰岩層(tuff)を挟み、灰色の細粒砂岩の表面に、黒い模様が見える露頭がありました。【写真下】

 一見、火山岩のように見えてしまいますが、灰色部分は細粒砂の変質したもので、黒っぽい部分は元の砂や泥なのかもしれません。

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熱変質した細粒砂岩(西武道沢-②)


 標高1005m付近(【図-③】)では、熱変質した灰色細粒砂岩層が連続していて、N30°E・5°SEの走向・傾斜でした。

 標高1008m付近(【図-④】)では、熱変質した灰色細粒砂岩層の中に、2mの間を空けて2つのコングロ・ダイクがありました。

下流側のものは、幅20cm×長さ1m、N50°E・垂直で、上流側のものは、幅30cm×長さ2m、N40°E・垂直でした。元々、繋がっていた一連のものだったのかもしれません。

 標高1010m付近(【図-⑤】)では、熱変質した灰色細粒砂岩層の東西走向に対して、N10~20°W・80°W傾向をもつ小規模な破砕帯が見られました。

 標高1020m付近(【図-⑥】)では、熱変質がない本来の色のようで、暗灰色の細粒砂岩層で、走向・傾斜は、EW・5~10°Sでした。標高1030m付近(【図-⑦】)でも、EW・10°Sの黒色泥岩層が見られ、熱の影響はありません。ただし、黄鉄鉱は認められました。

 しかし、標高1035m(【図-⑧】)では、珪長質火山砂に見える凝灰岩層を挟む灰色細粒砂岩層があり、熱変質の特徴を残していました。

 標高1038~1040m(【図-⑨】)では、凝灰岩層を挟む中粒砂岩層が見られましたが、元の色彩の暗灰色でした。

 標高1045~1050m(【図-⑩】)に、川に沿って露頭幅40mに渡って、閃緑岩(diorite)が見られました。川底に、閃緑岩、その上に粗粒砂岩層が載っています。砂岩層は熱の影響を受けて、暗灰色に変色していました。【写真・下】

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閃緑岩と砂岩層との境

 この上流、標高1055mから1075mにかけて、黒色泥岩層が分布していました。
 1075m付近(【図-⑪】)の凝灰岩層との挟みで、N30°E・5°SEでした。また、黒色泥岩層には細粒砂岩層との互層部もあり、わずかながら二枚貝Macoma sp. が認められました。

 標高1080m二股(【図-⑫】)から上流では、帯青灰色細粒砂岩層が見られました。凝灰質な砂岩層が、熱変質を受けているものと思われます。点紋の入る帯青灰色細粒砂岩層も見られました。N20~30°E・8°SWでした。ここを境に、泥相から砂相へと岩相変化がありました。ちなみに、灰白色細粒砂岩層と帯青灰色細粒砂岩層の互層部で、目視できる極めて小規模な断層が認められました。

 北からの沢の合流点手前、標高1098m付近(【図-⑬】)では、無点紋の帯青灰色細粒砂岩層と暗灰色粗粒砂岩層が見られ、N40°E・5°SEでした。
 次の北からの沢との合流点、標高1110m付近(【図-⑭】)からは、凝灰質の暗灰色粗粒砂岩層が卓越してきました。

 南東から流入する沢との合流点、標高1125m(【図-⑮】)では、玢岩と帯青灰色細粒砂岩が接触している露頭が見られました。
 北からの小さな沢状地形の標高1145m付近(【図-⑯】)では、灰色細粒砂岩層があり、わずかに二枚貝の化石が認められました。この層準の上下は、凝灰質粗粒砂岩層なので、特別な層準です。

 これより上流から、標高1150m二股まで(【図-⑰】)は、凝灰質の暗灰色粗粒砂岩層が見られ、風化すると黄土色となる内山層上部層で典型的な層準でした。二股から上流は、両方の沢ともブッシュが多く、水量からも露頭が望めないだろうと判断して引き返しました。
( cf) 西武道沢の標高1040m~1150m、【図-⑨~⑪】付近の地形図の沢は、土砂堆積物が多く、本流を歩いていて、沢の合流を確認できませんでした。)

 

 【編集後記】

 この沢では、内山層の下部層の泥相から、上部層の砂相への変化が見られました。また、比較的、大規模に貫入してきていると思われる閃緑岩(diorite)の熱変成の様子や、少し規模の小さい貫入の玢岩(ヒン岩)による熱変質も見られました。

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 懐かしいメンバーとの踏査風景の写真(閃緑岩の露頭付近)です。佐久へ赴任したての石川先生の姿もあります。

 ところで、雨川水系は、内山層の大きな分類では、「北部域」に属しますが、東西に延びる低い尾根を境に、北側の内山川(北部域の言わばプロパー)とは、岩相が微妙に違います。この後、コングロ・ダイクの話題に関して、タイプの異なる産状が明らかになっていきます。

 ・・・・前回(6/14)と、大部と言うより、一週間近く間を開けてしまいました。この間、個人的な大きな行事は、定期検診の為の通院と、「みゆき会」の句会でした。しかし、なかなか俳句にするような印象的な体験やアイディアがなくて苦しみ、また、4月以来中断している「俳句に関したブログ」も未完成なので、そちらにも手を染めていました。それにも増して、今や、農作業の最盛期で、どうしても午前と午後の作業を入れてしまうと、「はてなブログ」を挙げる時間が確保できませんでした。

 そこで、今回は、農作業(草刈り)の後に入浴し、夕食前の短い時間で、慌ただしく取り組みました。ぼちぼちと続けますので宜しく! (おとんとろ)