北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語-129

雨川水系の沢

5. 林道・東山線の調査から

 この林道には、平成15年の偵察を兼ねた8月11日と本調査の10月19日を始めとして、その後、コングロ・ダイク露頭の写真撮影をする為に、何度か入りました。
 (ルートマップは、西武道沢と兼用ですが、参照してください。)

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林道東山線(大沼林道) 再掲載

 榊橋の東、地図のP990地点から、県道93号線と分かれて、林道・東山線に入りました。北からの小さな沢状地形(【図-①】)では、熱変質した灰白色泥岩層です。2本目の沢状地形の手前40mで、二枚貝Macoma sp. を見つけました。【図-②】でも、同様な熱変質灰白色泥岩層でした。そして、北からの小さな3本目の沢状地形の東(【図-③】)からは、熱変質の影響が小さく、暗灰色細粒砂岩と黒色泥岩(4対1で砂優勢)の互層が見られました。走向・傾斜は、N40°W・10~20°NEです。
 4本目の沢状地形の東(【図-④】)では、黄鉄鉱が認められるものの、熱変質はほとんどありません。砂泥互層が続きました。そして、林道の湾曲部(【図-⑤】)では、砂優勢(5対1)な砂泥互層で、N50°W・5~10°Nでした。ちなみに、サンド・パイプ(sand pipe)が、黄鉄鉱で置換されていました。
 北西から流入する沢の手前(【図-⑥】)では、わずかに細粒砂岩層を挟む黒色頁岩層で、二枚貝Macoma sp. を見つけました。N70°E・8°Nでした。
 少し先の【図-⑦】では、再び細粒砂岩と黒色泥岩の互層で、N25°W・5°NEでした。
 そして、崖の上部は標高1100mほど、林道は標高1085mほど(【図-⑧】)では、「大規模コングロ・ダイクの項」で既に紹介した《写真》のような崖露頭が見られました。

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コングロ・ダイクの露頭(東山林道)

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露頭の説明図



 見ている方向は北西で、コングロ・ダイクを含む地層の中に、正断層と逆断層が見られます。中央のコングロ・ダイクの礫岩層は、観察中、最大の層厚を示し、110cmありました。周囲の地層は、下位から黒色泥岩層、砂優勢な砂泥互層(風化した粗粒砂岩層を挟む)、茶褐色に風化した粗粒砂岩層、再び、砂優勢な砂泥互層と、正常な堆積構造をしています。
 走向・傾斜は、N70°E・10°N(左・南側)~N80°E・5°N(右・北側)と、ほぼ東西走向で、緩やかに北に傾いています。写真の右奥側へ、緩く傾斜していることになります。一方、コングロ・ダイクの走向・傾斜は、N80°W・80°Nなので、周囲の砂泥互層とはわずかにずれて、ほぼ垂直に切るような形になります。貫入の深さ(高さ)は、見えている部分で、5mほどです。露頭全体は、高さが10m強の切り通しです。

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 コングロ・ダイクの礫の種類は、暗灰色中粒砂岩と黒色頁岩片が主で、やはりチャート礫は含まれていません。最大な礫は、直径が20~25cmにもなる砂岩塊でしたが、礫の配列から堆積時の重力方向は特定できませんでした。
 一方、断層は目視でき、写真上部の風化した茶褐色砂岩層に着目すると、左下から右上に筋状に延びている正断層があり、左側が2m(1.5m+0.5m)ほど落ちています。その後で、この断層構造を右下から左上にかけて、逆断層が乗り上げるように切っています。移動は2.5m以上と思われます。
 しかし、現在は、コンクリート壁で覆われてしまい、観察することはできません。

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コングロ・ダイクの礫種(中央部を拡大した図)

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 北西からの沢状地形付近、【図-⑨】では、黒色頁岩から灰色泥岩に移行すると共に、砂岩の割合が多くなりました。また、暗灰色細粒砂岩層の中に、異質の砂岩塊が同一層準に並んでいました。山中地域白亜系・白井層の「軟弱砂岩」に形態は似ていますが、含まれている中粒砂岩塊は柔らかくはありません。ここで、コングロ・ダイク(5~2cm×2m)が1露頭見られました。

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異質砂岩塊が同一層準に並ぶ 【図-⑨】

 東武道沢の本流と交わる林道の湾曲部(【図-⑩】)では、暗灰色細粒砂岩層でした。
 【図-⑪】では、N70°E・10°Nの黒色泥岩層に対して、N50°W・70°NEのコングロ・ダイク(15cm×2m)が見られました。
 【図-⑫】では、黒色泥岩の中に、ノジュールがいくつか含まれていて、割って中を調べてみると、「甲殻類カニの爪」と思われる化石が認められました。【写真・下】

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ノジュールを割ると、カニの爪が出てきた

 

 林道の南への出っ張り(【図-⑬】)では、黒色頁岩が主体で、わずかに互層していましたが、【図-⑭】では、灰色中粒砂岩層になりました。層厚5cmの凝灰岩を挟みます。
風化すると黄土色や累帯構造のように茶褐色の縞模様になるのが特徴です。凝灰質だと思われます。
 【図-⑮】【図-⑯】【図-⑰】と、風化すると黄土色となる凝灰質の灰色~暗灰色中粒砂岩層で、一部には粗粒砂岩も挟まっていました。
 北からの沢状地形手前(【図-⑱】)は、大きな崖露頭で、
凝灰質の灰色粗粒砂岩層と、ほぼ同質の暗灰色中粒砂岩層の互層が見られました。N50°E・10~20°NWです。その少し北側には。水棲植物の炭化物が含まれていました。【写真・左】

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植物の茎や炭化物を含む

 

 辰巳沢本流と交わる林道の湾曲部(【図-⑲】)では、中粒~粗粒砂岩層が見られました。詳細に見ると、(ア)青味を帯びる灰色中粒砂岩層、(イ)灰色中粒砂岩層、(ウ)暗灰色中粒~粗粒砂岩層(特に黄土色に風化しやすい)の3タイプあります。全体的に凝灰質です。
 凝灰岩層(特に、緑色凝灰岩層)がもっと含まれてくる層準も含め、駒込層と解釈されてきた説明図幅もあります。
 しかし、泥相から砂相へと変わる辺りからが、内山層上部層として良いのではないかと考えています。

                 

 【編集後記】

 前にも紹介しましたが、写真の露頭は、林道に岩石などが崩れるのを防止する為に、コンクリート壁で覆われてしまっています。

 本文で紹介した露頭の写真は、色彩を少し加工したので、あまり手を入れてない写真も載せます。(おとんとろ)

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別な日に撮影した露頭