北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語-147

 南部域の沢

3-(4) 大野沢支流・第3沢の調査から

 大野沢支流第3沢は、第4沢の調査(平成5年)の翌年に入った沢ですが、不明な箇所が多く、3回の調査(10~11.Sep.1994/28.Sep.1996)を行ないました。【下図を参照】
 大上林道の標高980m付近に第3沢の入口があります。ここから西へ約30mほどの露頭(【図-①】)からは、黒色頁岩層の中にシダ植物化石を多産する層準(瀬林層の下部と上部の境目、分帯では下部層の最下部)が見られます。

 第3沢の入口から、20mほど入ると(【図-②】)、珪質で明灰色中粒砂岩を主体とする層に、風化すると黄土色になる中粒~粗粒砂岩と、礫岩層(礫の最大径2cmチャート礫)が挟まっていました。岩相から、下部瀬林層と思われます。
 少し上流に、黄色の大型ポリタンクがありますが、これは、宿泊施設・臼石荘の簡易水道水の源泉です。
 沢の標高1020m付近(【図-③】)では、花崗岩の大礫を含む礫岩層が見られました。長径を北北東-南南西方向に向け、敷石のように配列していたので、最初、人為的に並べたのではないかと思ったほどでした。3個の巨大な礫の内、最大礫は、30×45cmにもなります。黒色頁岩片も円礫で含まれていました。【写真・下】
 この上流に、方解石の脈(calcite vein)が入る珪質で塊状(massive)の砂岩が、滑滝を形成していました。

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大野沢支流第3沢の花崗岩



 沢の標高1035m付近(【図-④】)から、泥が多くなり、灰色中粒砂岩と砂質黒色頁岩の互層が見られました。南落ちとも、北落ちとも見える構造不明部分があります。全体を代表しそうなN40°E・60°SEを採用しました。(図への記入なし。) 
  また、平成8年の調査では、同行した松川正樹先生(東京学芸大学教授)の鑑定で、量はわずかですが、発見した二枚貝化石が、「Costocyrena radiatostriata」と「Paracorbicula sanchuensis」というシジミ貝類であり、下部瀬林層であると判断しました。

 

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大野沢支流第1~第5沢のルートマップ


  

 そして、標高1040mの二股(【図-⑤】)付近にかけて、鑑定をお願いしようと予定していた化石層準があります。
 平成6年に、黒色中粒砂岩層から、ハマグリやマテガイに似たもの、シジミ類の二枚貝化石を見つけていました。また、広葉樹の植物化石もありました。
 『(向斜構造から、瀬林層の下になるので、岩相も似た石堂層?と思っていたので)もし、白亜系の中から広葉樹化石の発見となると・・』と、もちろん冗談ですが、期待していました。松川先生は、一目見て、『白亜系ということは無いです。内山層のものでしょう』ということになりました。

 すると、標高差でわすか10mにも満たない近接した地域で、白亜紀後期の地層(下部瀬林層)と新第三紀中新世の地層(内山層)が接していることになります。内山層基底礫岩層を欠いていることと考え合わせると、断層が考えられます。【図-④】と【⑤の間】に都沢断層を推定する根拠になりました。

 標高1040m二股の上流5mからは、熱変成を受けているのか、いくぶん硬い砂質の黒色頁岩層が出始め、標高1070m付近まで、砂質の黒色頁岩層と黒色細粒~中粒砂岩層の互層が続きました。

   沢の標高1080m付近に、灰色粗粒砂岩層があり、標高1090m付近(【図-⑥】)では、構造的に特徴のある暗灰色粗粒砂岩層が見られました。全体は、粗粒砂岩ですが、中に砂質黒色頁岩片やラミナ構造を残す細粒砂岩片を含んでいます。堆積後、ある程度固結したものが破壊され、粗粒砂岩に取り込まれた二次堆積と思われます。
 沢が西に振る、標高1100m付近(【図-⑦】)では、砂優勢な黒色中粒砂岩と黒色頁岩の互層が見られ、走向・傾斜は、N50°E・30°NWでした。

 標高1110m~1140m(【図-⑧】)にかけて、(ア)二次堆積と思われる黒色頁岩片を含んだ砂岩層、(イ)反対に、灰色細粒砂岩(ラミナ)が、泥によって切られた構造の砂質黒色頁岩層、(ウ)灰色中粒砂岩層と砂質黒色頁岩層の境が、短冊状に接している構造があります。二次堆積や堆積途中での移動を示唆する異常堆積構造が認められました。
 沢の標高1150m付近(【図-⑨】)には、凝灰岩層や凝灰質中粒砂岩層がありました。砂岩層には、薄い黒色頁岩層が挟まれ、黄鉄鉱も含まれています。
 その上流部(【図-⑩】)では、再び、黒色頁岩層と黒色中粒砂岩の互層が見られました。
沢水の途切れる標高1200m付近まで踏査し、調査を終えました。

 

 【編集後記】

 前回(第146)、ブッシュの少なくなった尾根で、鹿(ニホンジカ)の寝床と思われる痕跡の話題を取り上げましたので、今回は、角を木の幹に擦りつけた「ひっかき傷」を紹介します。【下の写真】

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鹿の角によるひっかき傷

 一方、熊(ツキノワグマ)の爪による「ひっかき傷」は、【写真】のようになります。かつては、「自分の縄張りを示したり、大きさを誇示したりする為」と言われたこともありましたが、実際は、樹皮を傷付けて樹液を嘗めていたことが、ビデオ撮影で証明されました。(詳細は、山中白亜系の項目で、いきさつを説明してあります。)

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熊のひっかき傷

 似た「ひっかき傷」ですが、熊の方は、斜めからだけでなく、縦(おそらく、上から下へ)にも傷が付けられています。ちなみに、鹿の角による形跡だとする証拠は、近くに、【写真】のような鹿と思われる体毛が落ちていました。

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鹿の毛

 

 いよいよ明後日(10月31日)は、ハロウィーンならぬ、衆議院議員選挙の投票・即日開票日となります。市会議員や県会議員選挙と違って、国会議員の長野県選挙区(第3区・小選挙区)となると、広範囲に立候補者が少ないので、私の住む田舎には、候補者の選挙カーは、もちろん、政党の広報車からの呼び掛け声も届きません。

 我が家では、選挙権を得てから、今まで一度も選挙を棄権したことは無いので、今回も93歳となる母を連れて、地区会館の投票所に行こうと思います。(おとんとろ)