北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語-148

南部域の沢 

3.内山層の分布する抜井川支流の沢

 

3―(5)大野沢支流・第5沢と

     大上林道の調査から

 

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大野沢支流第5沢付近のルートマップ

 大野沢林道の標高1010mから、大野沢支流第5沢に入りました。沢の入口は、石英や長石などを多く含むアルコース粗粒砂岩と砂質の黒色頁岩の互層でした。(【図-①】)
 アルコース砂岩(arkose sandstone)というのは、花崗砂岩とも呼ばれ、酸性~中性の火成岩やその変成岩が風化され、供給された堆積物からなる粗粒砂岩のことです。最近あまり聞かれなくなりましたが、地向斜~造山運動の後、隆起・浸食された砕屑物が周囲にできた堆積盆に、堆積した岩相の特徴です。走向・傾斜は、N10°W・80°Wと、ほぼ南北走向で、垂直に近い西傾斜を示していました。

 その上流10mに、凝灰質の明灰色中粒砂岩層で形成された滑滝(落差2.5m)がありました。軽石石英が押しつぶされていました。(【図-②】) 滝の上流は、風化すると黄土色となる凝灰質な粗粒砂岩と、砂質黒色頁岩の互層(N20°E・70°W)です。

 沢の標高1025m付近(【図-③】)では、露頭幅5mの礫岩層が見られました。最大径10cmの灰色チャートの亜角礫です。粘板岩や硬い灰色砂岩も亜角礫です。この少し下流にも、同質の礫が入る砂礫層が見られました。

 沢の標高1030m付近では、砂質の黒色頁岩層(NS・70~80°E)が見られました。これまでも垂直に近い急傾斜でしたが、ここで落ちが西傾斜から東傾斜に変わっています。【図-③と④の間】

 二股となる沢の標高1045m付近(【図-④】)に、最大径15cmのチャート円礫を含む礫岩層と、粗粒砂岩層が見られました。

 この上流から標高1055mの滝(【図-⑤】)までの間は、砂質の黒色頁岩と中粒砂岩の互層が点在し、標高1050mの露頭幅8mの互層では、NS・60°Eでした。

 

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岩の硬さから誤解していた小さな滝

 

 大上林道側(右岸)からの枝沢との合流点手前、標高1055m(【図-⑤】)に、全体が粗粒砂岩でできた落差4mほどの滝【写真の上】があります。滝の上部は、結晶質の非常に硬い細粒砂岩で、チャート礫を含む礫岩層を挟んでいました。この滝が、非常に硬いので、平成6年に調べた時、大きな誤解をしていました。
 しかし、詳細に見ると、右岸側、滝の下1/3から右上方(左岸側)へ、幅30~50cmの白色~灰色のバンドが見えます。これは、結晶質の細粒砂岩層です。「レンズ状のチャート層(1994)」と記載していたものです。しかし、岩石を割って中まで見ると、チャート状部分は表面の2~3cmだけで、内部は結晶質の珪質細粒砂岩であることが判明しました。
 これは堆積後に再結晶したもので、明らかにチャート層でないことが理解できました。同時に、この極めて硬い地層が、内山層だとわかり、更に驚きました。(矢沢のクランクで話題にした内容です。)

 そして、滝の上の平坦部・標高1062~1063mの範囲(【図-⑥】)でも、珪質の結晶質細粒砂岩層が見られました。ただ、一見チャートに見えた産状は、『チャート礫や珪酸分の多い礫などを含んだ砂岩層が、再結晶したものではないか』と推理するわけですが、本当のことはわかりません。特徴的な層準の延びを、大上林道でも確認できました。

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 一方、大上林道での様子です。林道の北へ大きく湾曲する「ヘアピンカーブ」の東側に、内山層基底礫岩層が観察できます。(【図-⑦】)
 大野沢本流の川底にも礫岩層を確認しました。対岸はコンクリート壁や木々で覆われていて確認できませんが、基底礫岩層の延長は、対岸から三角点1165.3の西まで続き、「四方原-大上峠断層」によって切られているのではないかと推測します。

 大野沢林道との分岐手前(【図-⑧】)に、流紋岩の岩脈があり、一部は、大野沢本流に岩枝となって抜けていました。(同様な流紋岩の岩脈は、第5沢の支流(【図-⑪】)と、大上林道沿い(【図-⑫】)にも露出していました。)

 林道沿い露頭(【図-⑨】)では、二枚貝化石を産出する黒色頁岩と明灰色砂岩の互層がありました。分級が悪く凝灰質です。この層準は、大野沢本流でも、第5沢との合流点の少し上流でも確認され、連続していると思われます。

 大上林道の標高1160m付近で、第5沢の標高1055mの滝を形成していた付近か、少し下流の互層部に対応する層準を確認できました。(【図-⑩】)
 コンクリート防護壁の東側の露頭は、滝と、その上流側に対応していると思われます。

コンクリート壁から東側に、やや黄緑色を帯びた珪質の中粒砂岩層(層理面がはっきりしない)、小断層、礫岩層、風化黄土色・灰色粗粒砂岩層という順番で観察できました。(説明図や写真は無し)

 

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構造不明部分の露頭

 コンクリート防護壁の西側は、疑問の多い構造をしていました。【露頭スケッチ参照】
 【上の写真】は、露頭全体のイメージ理解と共に、右上に着目すると、楔型に現世堆積物が入っています。その左(西側)は、黒色頁岩と黒色細粒砂岩の互層の上に、西にいくぶん傾いた形で、小断層のようなものが入っています。

 【下の写真】は、砂泥互層と小断層部分(写真上の斜めに入る)の様子です。断層の上に黒色中粒砂岩層が、下位の砂泥互層とは非調和的で、交差するように乗っています。   

 この産状を、新しい時代の地層が不整合で覆っていると解釈すれば、起こり得る地質現象ですが、上位の黒色砂岩層は、下位の内山層と同時代のものと思われます。それ故に、構造不明な奇妙な現象です。

 全体は、かなり地層が立った構造をしていますが、礫岩層(層厚3m+)付近を境に、西側の砂岩の互層部は西落ち、東側の砂泥互層部は東落ちになっています。
 また、凝灰岩層と砂岩の互層には、生痕化石のひとつであるバイオターベーション(bioturbation)と言って、底棲生物の這い回った跡が残されていました。礫岩の右側、砂岩層の表面には、蛇紋岩が付着していました。

 黒色頁岩と細粒砂岩の互層部からは、淡水性シジミ貝(corbicula)の仲間の二枚貝化石が見つかり、内山層であることが確認できました。

 平成27年8月21日に、再度確認の為に同じ露頭を見に行きましたが、木々に覆われ、露頭は隠されてしまっていました。今では貴重な資料です。

 

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小断層部分の様子

 

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大上林道の構造不明部分の露頭スケッチ

 

 【編集後記】

 地質に関する話題(佐久の地質調査物語)は、第147回を2021年(令和3年)10月29日に載せたので、第148号は、何とおよそ2ヶ月ぶりになります。改めて、サボっていたなあと思います。今回で、具体的な地質データの報告は終わりとし、次回(第149回)からは、これまでの情報をまとめた内容に言及していきます。少しは、興味も沸いてくると思います。編集方針で、地道な実地に踏査したデーターを後世にも伝えたいという意味で、詳細に載せています。動植物調査より、はるかに壊れにくい岩石や地層ですが、それでも長年の間に、浸食されて変形したり、それにも増して、勢いのある植生によって露頭が覆い隠されてしまいます。この為、私たちの後輩は、あるのに見えないということになってしまいます。実際に、自然を目撃した者の使命として、資料を残しておこうという考えからです。

 ところで、今日の午前中は、雪が舞っていました。季節風が強いので、北アルプスを越えて、佐久地方まで雪雲が流れてきているようです。真冬日ではなかったですが、やはり日差しがないと、寒さは一入です。そんな中、帰省中の孫(小学1年生)の唯一の宿題が、『木製独楽(こま)を回せるようにする』だそうで、私が指南していました。

 昨今の県外の小学校では、長期休みの宿題が無いようです。夏休みは、何もありませんでした。多分、どの家庭でも、家庭独自の方法で課題となるもの(練習帳や場合によっては塾通いなど)で勉強させているから、「学校ではノータッチ」という方針なのでしょうか?

 こうなると、経済格差だけでなく、家庭での学習に対する応援態勢の差で、今度は学力格差になるなあと懸念するのですが、実態はどうなのでしょう。ちなみに、孫は、算数は計算ドリルをやり、何と、英語は中学1年生の秋頃の内容をやっていたので、びっくりです。まさに、「名探偵コナン」の工藤進一君のように、体は子供、頭脳は大人というようなミニチュア版だと思いました。もっとも、親に問題をやらなくて、注意を受けながら、渋々とやったり、お菓子が欲しいと大騒ぎする悪がき要素のたっぷりと詰まった小学1年生です。

 私(じいじ)の仕事は、暇になるとゲームや関連のテレビを見てだらだらと過ごすので、冬田道に散歩に連れ出すことです。最初は嫌がっていますが、すぐに自然の中に興味のあることを見つけ出し、ちょうど子犬を散歩に連れ出したら、あちこち過ぎ回って寄り道をするのと同じ現象です。それも、冬晴れの雪景色は楽しいようです。

 ただ、私には運動量が少なすぎるので、私は、後でもう一回、競歩の散歩に出かけています。寒いのも我慢です。(おとんとろ)