第Ⅸ章 内山層の層序
内山層の分布する各地域の調査した沢の基礎資料は、既に述べてきましたが、地質柱状図で比較しながら、層序と岩相・層厚などの変化について見てみたいと思います。
1.北部域の地質柱状図データーから
基底礫岩層の露頭が見られるのは、主に内山川本流で、北部域での支流では、牛馬沢と富沢だけです。上図では、大沼沢と武道沢が本流へ合流する、内山川本流のデーターを加えてあります。
内山川水系の支流、柳沢と大沼沢は、内山層の模式地とされています。基底礫岩層から、ほぼトップの凝灰質砂岩層ないし緑色凝灰岩層までが、ほぼ連続して観察でき、内山層の全層準が堆積していると思われます。ただし、小さな背斜・向斜構造の繰り返しがあるので、それらを考慮して、層厚を最大600mと推定しました。
また、2つの沢では、層序の中程となる粗粒砂岩層や礫岩層の上位に、黒色泥岩層が厚く堆積しています。これは、基盤の先白亜系を基底礫岩層が不整合で覆い、急速に深まる海に堆積物を貯めた後、一時的に海が浅くなる時期があったことを意味しています。そして、再び海進があって、次第に深まる海に泥岩層が貯まりました。つまり、「海進~海退」という堆積輪廻が、内山層では2回繰り返されたことを示しています。
層序の中間辺りの粗粒砂岩層ないし砂礫岩層が発達する層準は、北部域だけでなく、ほぼ全域で共通して見られます。そこで、ここを境に下部層と上部層に区別しました。
しかし、北部域でも西側の沢(例えば、中村林道の沢)や、中部域・雨川水系や谷川などの岩相変化を見ると、砂礫層の上位は、泥相にならずに砂相のまま、凝灰質へと変化していきます。
つまり、内山層が一番発達している柳沢や大沼沢は、全域からみると、内山層全体の岩相変化を代表していないように思います。岩相変化としては、典型的な堆積輪廻の様子を観察できますが、寧ろ、特別です。内山層堆積盆の中心部であったのかもしれません。
もうひとつの大きな特徴は、異常堆積構造のコングロ・ダイクが、下部層の中でも、比較的、上位の層準に集中していることです。そして、大沼沢より東側の沢では見られません。
中部域や南部域の沢でも、コングロ・ダイクを含む層準は、多くの沢で認められました。ただし、特定な層準に集中するという訳ではありませんでしたが、ほとんどが下部層に属しているように思います。
それで、北部域での模式的な地質柱状図(層序)を、左図のようにまとめました。中部層は、大きな区分では下部層に属するものの、ひとつの区分とすることにしました。
(ア) 内山層・下部(狭義)
① 層厚5~10mの粗粒砂岩層ないし砂礫岩層の上に、20~30mの厚さで、巨礫を含む礫岩層が載っています。
内山川本流の相立(あいだて)と、苦水(にがみず)の日向橋下流では下位の地層との直接的な関係は確かめられないものの、基底礫岩層と考えられる礫岩層が観察されます。
内山川本流の「千ヶ滝上流部付近」、「モモロ沢の西隣沢との合流点付近」、「黒田・初谷沢の入口付近」の3箇所で、巨礫を含む基底礫岩層の下に粗粒砂岩層があり、下位の白亜系と不整合で接していると考えられます。特に、千ヶ滝の上流部では、粗粒砂岩層から内山層の二枚貝化石が発見され、基底礫岩層との接し方からも、間違いはないという感触を得ました。
そこで、巨礫を含む典型的な礫岩層だけでなく、その下位の粗粒砂岩層や砂礫岩層を含めて、基底礫岩層群という解釈が良いように思います。ただし、基底礫岩層の下に砂礫岩層が認められたのは、北部域の上記3カ所と、南部域の古谷集落北側の沢だけでした。
② 基底礫岩層群の上に、砂岩と泥岩の互層が載ります。大沼沢や柳沢では、砂泥互層を、さらに、下位の砂優勢と上位の泥優勢の部分に分帯できるようにも思いますが、他の沢では明確にすることはできませんでした。
特に、黒田では、初谷沢合流点の基底礫岩層群から、推定層厚で25mにも達しない間で、完全な黒色頁岩層が現れます。この傾向は、南部域(大野沢支流第四沢など)でも認められました。砂泥互層部分は、堆積盆の拡大と海の深まりによって、砂優勢から泥優勢へと徐々に移行したわけではなく、急速な海の深化があった場所もあったと思われます。
③ 基底礫岩層群と砂泥互層を合わせて、下部内山層(狭義)です。層厚は、50~200mと推定しています。層厚に幅が大きいのは、大沼沢付近で、最大の200mを示しますが、それぞれ東西方向に層厚が、大きく減少する傾向があるからです。
(イ) 内山層・中部・広義の「内山下部層」に属する
① 下位の砂泥互層(下部内山層)に対して、砂質の黒色頁岩層が主体で、岩相は単調になります。ヒン岩(porphyrite)岩脈の貫入に伴う熱変成によって、粘板岩になっている部分もあります。
② 正常に堆積した地層(内山層プロパー)に対して、ほぼ直交するように礫岩層(コングロ・ダイク)が挟まっています。コングロ・ダイクは、大沼沢よりも東側の沢では認められません。このため、神封沢を抜ける推定断層の東側は分帯が難しく、砂泥互層と泥岩が多くなる岩相の変化によって、下部内山層と区別しました。
コングロ・ダイク層準は、薄い凝灰岩層を挟み、少なくとも2~3層準あると推定しています。しかし、小さな褶曲構造もあり、対応関係はつかめていません。
③ 内山層・中部層の厚さは、100~150mと推定しています。内山川水系支流の沢の中流部に、広く分布しています。
(ウ)内山層・上部(上部内山層)
① コングロ・ダイクを含む単調な泥岩層の上に、中粒~粗粒砂岩層ないし砂礫岩層が載ります。層厚10~20mの砂岩層や礫岩層を含む砂礫岩層の層準がほぼ全域で認められ、この層準から上が、上部内山層です。
② 砂礫岩層のさらに上位にくる層準は、再び砂泥互層に漸移する東側地域と、砂が卓越したままの西側地域で、岩相は大きく異なります。
東側の舘ヶ沢付近では、砂質の黒色頁岩層や灰色砂質泥岩層(シルト岩)に二枚貝化石を多産する層準があり、その上から凝灰質砂岩層が発達します。
また、大沼沢付近では、塊状の砂質泥岩層が多く、玉ねぎ状風化も頻繁に見られます。中間に当たる武道沢付近では、カキ殻化石を含む礫岩層が発達しています。白色チャート、蛇紋岩、緑色片岩など特徴的な礫種が見られました。釜の沢から西側では、凝灰質砂岩層が多くなります。上部内山層堆積盆は、このような岩相の違いから見ても、東西方向で性質が異なっていたと考えられます。
③ 上部内山層の層厚は、100~200mと推定しています。東側ほど厚い傾向があり、大沼沢では250mとかなり大きめな数値となりました。西側の釜の沢や中村林道の沢では、露頭がなくて上限の確認ができません。しかし、武道沢データの100mの層厚は維持されているのではないかと推定しています。
【編集後記】
新型コロナ・ウイルスの感染拡大が、私たちの地域でも拡大したので、野沢北高校卒50周年記念に向けた学級での打ち合わせ会(1月13日に予定)を中止しました。
私たちは、電話連絡だけで済みますが、お店の方は、とんだ迷惑なコロナ第6波です。丁寧に、予約をキャンセルしましたが、とても心苦しい次第です。
今日は、佐久医療センターに入院した母が、リハビリをする為に必要となった靴を届けてきました。大晦日の12月31日の朝、立てなくなり、言語が怪しくなりましたが、様子を見ていましたが、ついに決意して救急搬送を決断しました。予想していたように、脳血栓の初期段階で、右腕と右足が麻痺していたようです。発見が早かったので、回復の可能性は高いものの、高齢なので覚悟はしています。
昨日は、医師以外の方々から今後の予定や、転院までのことを聞き、少し私がパニックとなり、アルコール量が増えてしまいました。今日は、回復しています。(おとんとろ)