北海道での青春

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佐久の地質調査物語-156

 第Ⅹ章 コングロ・ダイクの成因

 

3.コングロ・ダイクと熱変成の関係

 

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ホド窪沢の標高980m露頭

 【写真―上】は、ホド窪沢の標高980m付近で撮影されたもので、周囲の地層とコングロ・ダイクが、ヒン岩によって熱変質されている産状を示しています。
 中央の灰色に見えるのが<コングロ・ダイク(大:10cm×1m、小:4cm×1m)で、周囲は灰白色に熱変質した泥岩です。泥岩層の走向・傾斜は不明です。(周囲の傾向では、EW・緩い南落ちです。スケールがNSを示します。)礫岩と周囲の泥岩の境界面は、波を打ったような状態になっています。                  

 

 玢岩(ヒン岩);閃緑岩組成をもつ斑状 (porphyrite) の半深成岩。(今はあまり使わないが・・・・)斑晶は、斜長石・角閃石または、輝石。石基は完晶質で、安山岩の石基より粗粒。

 日本では、特にグリーン・タフ地域に、岩脈または、小貫入岩体として多産する。

   

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【写真―】は、ホド窪沢の標高1010m付近で写したもの(合成写真)です。黒色泥岩にコングロ・ダイクが貫入した後、さらに両者をヒン岩の岩脈が貫入ています。

 

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ホド窪沢の標高1010m付近 / 写真の説明図(下)

 

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 周囲の黒色泥岩は、熱変成され粘板岩(slate)化しています。層理面がはっきりしないので、この露頭の少し下流の泥岩の走向・傾斜N75°~80°E・10°Sを採用すると、ほぼ東西方向に延び、緩やかな南傾斜です。写真の右側(上流)に傾斜しています。(木製のスケールが、南北を示す。)
 
 これに対して、幅20cm×長さ4m以上のコングロ・ダイクは、N20°W・垂直で、ほぼ川の流れが走向で、垂直に貫入しています。両者の非調和な構造に、さらに、ヒン岩岩脈(岩枝)の一部が、これらを貫いています。残念なことに、沢水をかぶっているので、境界面の様子は、よくわかりません。
 この事実は、①内山層プロパー(黒色泥岩)の堆積→ ②何らかの原因によるコングロ・ダイク礫岩層の貫入→ ③ヒン岩岩脈の貫入という順序性を、如実に物語っています。

 

4.岩石学的特徴からみた成因(まとめ)

 

(1)コングロ・ダイクの礫種は、主に黒色頁岩と、細粒~中粒砂岩であり、チャート礫を含まない。これは、通常に堆積した礫岩ではあり得ない。

 

(2)黒色頁岩の礫や岩塊に、「ひじき構造」といって二次堆積した証拠を持つものがある。

 

(3)コングロ・ダイクを含む泥岩層が(玢岩など貫入岩の)熱変質を受けている。さらに、コングロ・ダイクを含む泥岩層に、玢岩の岩枝が貫入している。一連の事件の中で、玢岩貫入は一番最後の過程である。

 

(4)コングロ・ダイクは、5タイプあった。 

 

 

 

 【 閑 話】     ランプロファイヤー(lamprophyre)の岩脈

 「ランプロファイヤー」というのは塩基性火成岩(煌斑岩・こうはんがん)です。岩石を構成する鉱物の性質から、さらに細分類されます。専門的になるので、珪酸(SiO2)が少ない半深成岩(玢岩とは、違いますが・・・)としておきます。
 こういった火成岩岩脈のように、地下深部のマグマが、既存の地層を突き破って貫入してきて、冷えて固まったというストーリーは、わかりやすいです。有名な例を紹介します。(いずれも、インターネットからの写真資料です。)

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シップロックの岩脈と岩頸(火道跡)

【米国・ニューメキシコ州・ナホバ自治区の岩脈】
 後方が、シップロック山(Ship rock)2188m(比高482m)で、マグマが上昇した火道跡(岩頸)が、浸食されて地表に現れたものです。
 手前が、岩脈の一部です。砂漠の下の基盤岩・マンコス頁岩層(Mancos shale)の割れ目に塩基性火成岩が貫入してきて、冷えて固まった後、浸食され、壁のように残りました。最大な岩脈は8km連続していると言います。岩脈の年代は30Ma(漸新世後期)、古第三紀末に活動した火山の産物です。

 

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瀬戸内海・鹿浦越岬の岩脈

香川県東かがわ市・鹿浦越(かぶらごし)岬の岩脈】
 白と黒の縞模様に見えるのが、シル(岩床)のように貫入した岩脈です。白い部分は、花崗岩です。
黒い部分が、塩基性火成岩で、花崗岩体の弱線を見つけるようにして貫入してきました。2cm~2mと貫入幅があるのは、納得がいきます。
  花崗岩も火成岩(深成岩)なので、火成岩同士です。貫入時期は、測定されていませんが、花崗岩の年代(白亜紀後期・90Ma?)から、それ以降だと考えられます。

 

 

 【編集後記】

  「コングロ・ダイク」(私たちが、フィールド・ネームとして名付けたもので、正式な科学用語ではありません。)の成因を考える上で、インターネットなどを使って、いくつかの「岩脈(ダイク)」を見つけました。

  例えば、本文の中の【閑話】で、紹介したような例もありました。また、以下の写真のような、かなり視覚的にも美しいものもありました。

 

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West Spanish Peak

 ただ、以上のような岩脈は、いずれも火成岩が、既存の地層の中で弱い部分を選んで、侵入(貫入)してくるタイプです。特に、上の写真の細長い筋のように見える連なりは、岩脈の列が連続しています。また、下の写真のように、貫入する方向が、ほぼ垂直方向だけでなく、水平に近いような場合もあります。(ちなみに、水平に侵入する場合は、特に「シル」という名前になります。)

 

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 以下は、火成岩ではなく、砂岩の岩脈です。固まった砂岩が貫入するわけではなく、侵入してくる時は、砂粒の状態で、後で固結して砂岩になります。周囲の地層が、まだ完全に固まっていない時に、地震とか地殻変動で弱い部分が出来て、そこへ砂を含む水流が流れ込んだのかもしれません。詳しい内容は、成因に関連した項目で後述します。

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 ところで、本州の南の太平洋側を移動していった令和4年2月10日(木)の「南岸低気圧」に伴う大雪には苦労しました。佐久地方、我が家の敷地内での定規による直接測定では、23cm~25cmでした。風も弱かったので吹きだまりという訳ではありませんが、場所によって多少の差がありました。

 北京冬季五輪のフィギュア男子フリーの演技が行われていました。特に、日本の3選手のライブ放送中は、テレビから離れることができません。フィギュアSPで、最高得点をマークした米国の「ネイサン・チェン」選手の滑走演技と得点が発表され、順位が確定してから、玄関から門柱、それから敷地と接する道路の除雪をしました。佐久地方では、雪が少ないので、「雪踏み」ではなく、「雪掻き」が一般的です。

 我が家の南側は、田舎にあっては比較的、幅広い道路ですが、お隣のMさん方の2階建物があるので、日陰になり雪が解けません。一方で、地下埋設の消火栓があったり、宅配・来客・その他で付近に車できた人の駐車スペースともなるので、特に綿密に除雪する必要があります。

 生涯、忘れることができない「平成26年2月の二日間で積雪1mに達した大雪」では無いにしても、降っても大雪とはならない佐久地方で、20cmを上回る積雪量は、大雪でした。

 冬型気圧配置が強まれば、佐久地方では、冬晴れの嬉しさの反面、厳しすぎる季節風に悩まされます。その中を、何んの因果か、私は冬田道を散歩しています。

 一方、長野県の北部や日本海側では大雪となっています。

 私は、ウルトラマンと同じで、太陽が出ていないと、どうも気分が優れません。青を通り越して、藍色に近い晴天の空の下、『雪国は大変だろうな』と思いながら、寒風の中を歩いていますが、たまには、雪国の苦労を私たちが、実体験するのも悪くありません。・・・しかし、2月11日の朝も含め、トータル3時間ほどの除雪作業で、筋肉痛とは別に、腰の辺りの筋が痛くなりました。(おとんとろ)