北海道での青春

紀行文を載せる予定

令和4年度 2月の俳句

      【如月の句】

 ①放課後の 下駄箱のぞく 兆す春 (合格の春)

 ②春芝居 P波S波で 賑わいし  (大森の式)

 ③酸化して 手つなぐふたり 春の風  (酸化モデル)
                《学校の春・三題》

 多忙を極めた1月が終わり、三学期末テスト(2月8日)が過ぎると、少し楽になって来た。ちなみに、テスト日は、内科の定期検診で年休を取った。
 2月10日は、公立高校の前期選抜試検と私立S高校の入試の合否発表の日であったが、南岸低気圧の通過に伴う、いわゆる「上雪(かみゆき)」が終日降り、積雪は30cmを越えた。

 自宅では湿って重たい雪を家内が除雪してあったが、2月11日(祝日・建国記念の日)の午前中半日を使って、きれいに片づけた。翌、2月12日(日)、吹奏楽部の休日練習で登校した。練習は生徒らに任せておいて、除雪スコップを使い、雪の校庭北東隅に、アルファベットで学校名を掘って楽しんだ。(【写真】)

雪の校庭(2月12日・3階ベランダから)

 その翌日、2月13日(月)に登校した生徒が気づけば面白がるだろうと楽しみにしていたら、2日続きの快晴(最高温度6℃だったが)で、雪は完全に融け切って文字は跡形もなくなっていた。
 2月18日(土)、「みゆき会」の俳句会に参加できた。ようやく普通の週休日を過ごせるようになった。その後も何回か、休日が巡ってきたが、その度に、休みの有難さを再認識しながら、如月は過ぎていった。
 今月は、「学校の春三題」として、春を意識した場面を俳句にしてみた。


 【俳句-①】は、文字通り、放課後の生徒らの下駄箱をのぞいていると、もう1カ月ほどすれば、高校合格そして卒業という「春の日」がやってくるのかなと、思ったことを詠んでみた。季語は、「春兆す」であって、まだ本物の春ではない。だが、春が近づいてくる予兆と予感がしている。

 初めて小学校に勤務し、小学1年生の下駄箱で、彼・彼女らの靴の大きさを見た時、あまりの小ささと可愛さに驚いたことがあった。
 一方、中学生のそれは、薄汚れて踵がつぶれている場合もある。晴れの卒業式の舞台を前に、3年生の今頃(三学期末)になれば、履き崩れて汚れているだろうから、休日に靴を持ち返って自宅で洗ってこさせようと点検したら、どれもきれいで、踵を踏みつけて履いている生徒は皆無であった。
 ともすれば、髪型や顔かたちに関心の高い生徒も、汚れた運動靴をスリッパのようにして履いているという、美的感性がアンバランスな生徒もいるものだが、さすがである。全員が、望ましい生活習慣や美的センスも良く身に付けていて、健全な中学3年生である。全員合格、間違いなしと思った。
  cf.)ちなみに、佐久地方の場合、年々桜の開花は早まりつつあるが、卒業式はもちろん、入学式でも、桜は間に合わない。

桜の花と共に合格の報せが届く

 【俳句-②】は、「初期微動継続時間は、震源からの距離に比例する」ことを学んだ生徒らが、その原因は地震波のP波とS波の速度差によることを追究する場面で、劇をして理解しようとしたことを詠んでみた。季語は、春芝居であるが、正直言って、俳句とは言えない。判じ物のような、別のジャンルで、クイズである。十分承知しているが、冒険、挑戦してみた。

 中学1年生の地震の学習で、地震学者・大森房吉先生の名前をいただいた「大森の式」は直接扱わないが、速度の違う地震波と揺れ方の違いは、しっかりと理解させる必要がある。それで、劇をした。
 想定:Uさんは、筆箱を集めるのが趣味で、アマゾン社へ注文すると、社長Aが車で先に品物が届くことを報せに来て、後から従業員aが自転車で筆箱を運んでくる。次の商品(筆箱)は、Bとbが、さらにCとcがというように配達される。筆箱は、主要動を意味していることになる。
 先に実施したクラスで、『どうして筆箱はひとつだけなんですか?』と質問を受けた。これは、自然現象を劇にしようとした時の本質的な問題だと気づかされ、劇の途中からは、配達員コンビを増やすことにした。
 傑作だったのは、いつも明るく笑いを取るYが、『私も劇のスタッフにして』と立候補した時、隣に座るKが、『あなたは駄目。私たちは配達員が通る道路に建っている建物の住人だから・・。空き家になるよ』と制止したことだ。完全に、劇に参加した人間と筆箱、P波・S波の関係、そして舞台装置までわかっている。
加えて、震源地に当たる机に座っていたIは、「Amazon社」なる看板までノートで作ってくれた。ともに、優秀な生徒だったが、ユーモアセンスも抜群である。劇をやっている生徒、そして見ている生徒も、会話や仕草の可笑しさに大笑いしていたが、授業をプロモートしている私も、楽しくて仕方なかった。

地震が発生した時刻は?



【俳句-③】も、俳句の体は為しているが、判じ物やクイズの類かもしれない。
入試に向けた模擬テスト問題の『二酸化炭素中で、マグネシウムが燃える』時の化学反応式で、『CO₂+4Mg+O₂→4MgO+C』と解答してきた優秀な女生徒がいたことがきっかけである。解答の正解は『CO₂+2Mg→2MgO+C』である。

二酸化炭素モデル(手が4本)

 集気瓶の中を完全に二酸化炭素だけにしたとすれば、彼女の答は間違っているが、化学反応式自体は正しい。彼女の「酸化の概念」に、物質により酸素と結び付き易さに差があるという理解が不十分なだけである。(この問題自体は、明らかに応用題である。)
 そこで、私がC役、O役は彼女と、もう一人の女子生徒、Mg役に男子生徒2名を選び、劇をすることにした。工夫したことは、私はカーディガンの袖を外し手に見立て、4本の手を作って、2人の女子生徒とつなぎ、CO₂ ができた。ここから、男子生徒が、それぞれ女子生徒とペアとなり、MgOが2つできる。要は酸素との化合し易さは、Mgの方がCより強いということだ。女子生徒にとっては、老人より若者の方が魅力があったという落ちになる。

 実は、手をつないだ男女ペアが、もじもじして、紅潮していた。青春だなあ!自分にも、そんな心ときめく時期があったことを思い出して、嬉しくなった。


【編集後記】

  3月27日(月)、同僚が、生徒の進学した高校を回り、高校へ引き継ぐ関係書類を届けて帰校した。残務整理をしている皆へと、お土産に「鯛焼き」を買ってきた。

 当の私は、机の中身を片づけて、中を雑巾で拭いて、いつでも退校できる準備ができた。それから、「はてなブログ」を書いている。

 前回(令和4年度・1月の俳句)に続き、3学年通信に載せた原稿の一部を載せようと思う。

地磁気の変位マップ (インターネットから)

       A中学校の秘密を暴く事件

 

 『春は曙、やうやう白くなりゆく山際』で始まる清少納言の作品「枕草子」に「香炉峰の雪」の段がある。中国の漢詩(白居易)に「香炉峰の雪は御簾を挙げて見る」があることから、一条天皇正室中宮定子が、雪の降った朝、『香炉峰の雪はいかならむ?』と問うた時、その意図を理解した清少納言は、機転を利かせて反応したという“自慢話”じゃあないかと酷評する人もいると聞く。これからのエピソードも、『あまりに、マニアックだ』とも言われそうだが、まずは始めてみよう。

 2月20日佐久市で12:00に太陽が南中するという情報を得て、3年の両クラスには、『学校の時計で正午になった時の太陽の方向を確認するように』というミッションを出しておいた。それぞれA(保健体育)とB(国語)の授業中だったので、B組に期待したが、彼らは貴重な瞬間を見逃してしまったようだ。私とF先生は、しっかりと目撃した。
 この現象の意味は、『兵庫県明石市(東経135°)で太陽が南中する時の、平均の時刻を、日本の標準時(正午)と定めている』のに対して、2023年2月20日は、佐久市がその役割を担ったというものだ。実は(入試対策も兼ね)「地軸が傾きながら公転をしている為に生ずる季節変化」によって、日本の北と南では、日の出・日の入り時刻だけでなく、南中時刻も年間を通して少しずつ変っていく。佐久市(東経138°30分)では、平均14分ぐらい日本標準時より、早く南中時刻を迎えているのが普通である。だからこそ、その瞬間が重要だと、両クラスには、後で説明した。

 さて、この日の観察により、とんでもない事実に気づいてしまった。
 それは、私たちA中学校校舎は、本当の東西方向から、8°ほど(僅かではあるが・・・)、東北東側にずれて建設されているらしい。まず、校長室にあるという校舎設計図を調べることにしたが、本物は教育委員会にあるということで、青焼き(昔の素案コピー)しかなかった。
四方位しか記されていないところを見ると、校舎は東西と決めて設計したらしい。

 翌日、クリノメーターという正確な方位磁石で測定してみると、校舎の方向は、もののみごとに、東西(N90°E)方向に一致していた。つまり、設計し、土地を測量した技術者の方々は、方位磁石を使って校舎の基礎工事をしていたことが判明した。

 ところがである。方位磁石の示す「南北」は、本当の「北南(NS)」を指していないという事実がある。地球の地磁気は、少しずつ変化している。長い年月の間には、南北が逆転した時期(反転期)があったこともある。

 現実の話では、それほど目まぐるしく変る訳ではないが、佐久市付近では、7~8°西側にずれている。(西方変位:北海道札幌9°~沖縄那覇5°最新情報。日本では、ほとんどの地域で、磁石のN極の指し示す方向は、真北より西側にずれている。)
 だから、もし、建物を本当の東西方向で建設したいと意図すれば、角度で8°ほど、東側にずらせば良いことになる。
 日照時間を一秒でも長く、日当たりを少しでも良くする為だが、日本一日当たりの良い佐久の地では、それほどせこせことしなくても良いということは、十分に確かだ。
 今日も冠雪の浅間山と、抜けるような青空が広がる。いつしか、冬晴れから、春晴れに変わりつつあるが・・・そこで、一句

 空の藍(あを) 少し薄れて 土手青む

 

 

日本列島の「西方変位」

 最後に、浅間山の噴火についての話題をあげたい。令和5年3月23日の15:30Pm、

浅間山(2568mASL)の「噴火警戒レベル」が、1から2へと引き上げられた。このところ、信濃毎日新聞では、マグマの上昇に先立って起こる火山性微動(地震)の回数が、紙面で伝えられていた。規模は小さいと思われるが、今日・3月27日の午後3時頃、水蒸気爆発があったようだ。幾分、灰色がかったものは、斜面をゆるやかに流れていたので、火山灰も伴ったと思われる。

  今朝、家を出た後で、後悔した。2日続けて降った雨が、浅間山の山頂付近では雪となったようで、浅間山・山系の「前掛山」だけが冠雪で覆われていた。周囲の「黒斑山」や「牙山」には、ほとんど雪がなくて、見慣れない光景だった。愛用の写真機を持ってくれば良かった。噴火直後のきれいな小爆発を写しておきたかった。(おとんとろ)