2.原始の海洋と大気は、少しずつ変化した
原始地球には、微惑星や氷塊・隕石が衝突し、これらの中に含まれていた 二酸化炭素(CO2)・窒素(N2)・ 水(H2O)が、高温の為に溶けて気体になっていた。やがて、高圧・高温の大気は、冷えて雨となって降り続き、原始の海洋が作られた。43.7~42.0億年前のことです。
CO2は、海水に溶けたり、岩石に取り込まれたりして大気圧が下がりました。
ただし、原始海洋は、亜硫酸(H2SO3)や塩酸(HCl)が溶けた強酸性で、様々な塩類や重金属が多量に溶け込んだ猛毒の環境でした。
一方、地球ではプレートの動きにより、地殻の移動が始まっていた。陸地ができると、激しい浸食により岩石成分が海水に溶け出して海を中和して、海底に沈殿した重金属は、プレートの沈み込みでマントルに閉じこめられた。海の浄化の始まりである。
また、沈み込んだ地殻には放射性元素鉱物が多く含まれていたので、下部マントルで発熱し、外核を溶かした。溶けて対流するようになった外核では、電流が発生し、地球磁場ができるようになった。今から約42億年前のことである。
磁場(磁力線)ができたことで、太陽から放出される素粒子や放射線の流れ(太陽風)の浸入を防ぐことができるようになった。
3.生命は、38~40億年前に誕生したらしい
原始地球環境が少し改善されたとは言え、生物は、まだ生きられる環境ではない。生命のない物質から、どのようにして生命が生まれたか起源は不明だが、可能性として、深海底の熱水噴出孔や温泉・噴気孔・間欠泉の環境が挙げられる。硫化水素を利用して生きるバクテリア(bacteria)が生きて、現在では周囲に生態系すらある。このような環境で、生命の構成素材物質が作られたのではないかと考えられている。破壊されずに海中に出た物質は、当時の月の激しい潮汐サイクルを受けた泡(少しは安定した空間)の中で、化学反応が進み、原始生命体になったのかもしれない。
しかし、この嫌気性(O2を必要としない)生物は、特殊な環境でしか生きられません。数え切れないくらいの種の生命体が、生きることを試みながら絶滅したことでしょう。
一方、プレートの動きにより陸上となった大陸は浸食され、NaやCaが海に溶け出して、CO2と化合して炭酸塩となりました。その結果、海中や大気中のCO2量が減って温室効果が薄れ、大気が澄んで太陽光が海面に届くようになりました。浅瀬にいたいくつかの種の中から、太陽の光エネルギーを利用し、夜間にも代謝できる生物が出現してきました。
シアノバクテリア(Cyanobacteria)です。
この仲間は、CO2を使って光合成をしてO2を発生させるだけでなく、発生したO2を自分自身でも利用するという、ものすごい生き方を選びました。遊離酸素(O2)は、本来、破壊魔(酸化して壊す)で、生物(有機物)の敵でした。まさに画期的な進化です。
この後、地球環境に大きな変化を及ぼします。オーストラリア西部の34.6億年前と27億年前の地層に、微化石や有機炭素(死骸)が証拠として残っています。これに先立つ、少なくとも38億年前には、最初の生物が誕生していたと考えられています。
4.シアノバクテリアが、酸素を地球大気に登場させた
今から32~29億年前、(もう少し前からかもしれないが・・・)太陽光を利用して、光合成をする生物(シアノバクテリア)が凡地球規模で増えてきた。O2を使って生活のエネルギーを得ること(呼吸)は、無気呼吸の20倍も効率が良い。
26億年前、マントル対流で、下部マントルから大規模なプルームが湧き起こると、小大陸が生まれ、大陸棚の浅瀬で棲息するシアノバクテリアには好条件となった。
海水に溶けた2価鉄(Fe++)は、次々と作られる豊富なO2で酸化して、3価鉄(Fe+++)の赤鉄鉱(Hematite・Fe2O3)となって沈殿し、縞状鉄鉱床を作った。25億年前までには、海底に厚さ数kmも積もり、褐色の海は澄んだ青い海に変わった。ただし、大気中の酸素量は、まだ現在の100分の1にも達していない。
この大事業を行なったシアノバクテリア(Cyanobacteria)は、
原核生物の藍色細菌のことで、その生物の周りに集積した堆積物が、ストロマトライト(stromatolite)という岩石になって残っています。【写真】は、博物館展示のストロマトライトの断面図です。泥や砂の堆積物の一部は、石灰質や珪質物質で置き換えられ、数mmより小さな縞状葉理が見えています。
実は、このストロマトライトは、現在も生息しています。西オーストラリアのシャークベイ海岸で見られ、世界遺産に指定されています。化石だけでなく現世にも存在するので、その生態もわかっています。
【ストロマトライト(stromatolite)のでき方】
シアノバクテリアは、長さ1~10μm(μm:100万分の1メートル)で、直径は約5μmと、顕微鏡レベルで観察できる大きさです。日中は酸素を発生させ、夜は粘液で堆積物を定着させます。翌日は、その外側へと生息域を移します。このように表面で生活するシアノバクテリアは、外側へ堆積物(砂泥など)を拡大していくので、ストロマトライトは大きくなっていきます。しかし、その成長速度は、極めて遅く、サンゴ礁の10分の1、平均0.4mm/年です。だから、ラグビーボール大の直径20cm×高さ30cmまで成長するのには、千年・二千年オーダーだと推定されています。
【 閑 話 】
遙か昔の大学時代、私の所属したのは、古植物学者のT教授の教室で、先生の講義中に『藍藻類(blue-green algae)』という言葉が何度も出てきました。
不勉強だった私は、当時のスライド提示の鮮やかな青色画面と、酸素を地球に供給したすごい奴、海草(藻類)の原始的なもの?程度の理解と印象しか残っていませんが、なぜか「ランソウ」の響きはとても懐かしいです。
しかし、生物を原核・真核生物で分ける重要さや、葉緑体(chloroplast)の起源に関しての状況から、動物界・植物界に対する菌界を強調する意味合いもあって、シアノバクテリアが使われ、藍藻類・blue-green algaeは、今ではほとんど使われません。
【編集後記】
本文で使用した「現存するストロマトライト」の写真は、インターネットで紹介されていたオーストラリア西部のシャーク湾のものです。知らない人が見れば、『大きなマリモみたいな・・』と思うかもしれませんが、実に太古から営々と命を繋いできている子孫です。
ある中学校で、私はハワイ島の溶岩「パーホエホエ」の実物を生徒が持っているということを知り、持ってきてもらいました。そして、他の生徒にも見せて、一人で興奮していましたが、『アスファルトみたい』というある子のつぶやきで、冷静になりました。貴重な資料でも、背景を理解して見ないと、そんなにすごいものだとは感じられないんですね。骨董品を「がらくた」と感じてしまうのと同じかもしれません。