北海道での青春

紀行文を載せる予定

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

佐久の地質調査物語(最終回)

お わ り に 「矢沢の調査で、ひとまずのまとめ」としたように、山中地域白亜系を中心とした佐久の地質調査物語は、これで終わりにします。平成4年度~平成8年度の5年間で調査した範囲の話題です。その後に足を運んで、追加した内容と、まとめるに当たっ…

佐久の地質調査物語(地史―3)

3. 山中地域白亜系を中心とした地史 (1)基盤岩(御座山層群)が堆積した時代 御座山層の観察した範囲では、泥岩(石墨化~千枚岩化)から砂岩、凝灰質砂岩、砂泥互層と変化しているので、泥相から砂相へと移行している。(その更に、以前は不明) その上…

佐久の地質調査物語(地史―2)

第10章 山中地域の地史 2. 二畳紀後期~白亜紀後期の 日本付近の概観 (1)二畳紀(ペルム紀)後期~三畳紀前期 アジア大陸の東縁で、最初のプレートの沈み込みが始まりました。今より南方で、現在の南トナ海から東シナ海付近です。(揚子地塊への沈み込…

佐久の地質調査物語(地史―1)

山中地域の地史 自分の生活している地域の大地が、どんな歴史をもっているのかという問いは、人々の根源的な問題で、とても興味深いことです。 かつての世界の人々は、洋の東西を問わず、「天地創造の物語」や「神話」などを創作して、自分たちの民族や、さ…

佐久の地質調査物語(地質構造―7)

褶曲構造と断層について (3) 内山層の堆積後に活動した断層 明らかに内山層を切っているので、内山層堆積後の活動であることは確かですが、都沢断層のように、南北性(SW-NE)に近いものと、残りの2断層のように東西方向のものがあります。いずれも、…

佐久の地質調査物語(地質構造―6)

(2) 褶曲構造の形成に伴い活動した南北性の断層 【 閑 話 】 四方原山-大上峠断層の ゆくえ? 山中地域白亜系(佐久側)の調査段階では、鍵掛沢断層群(鍵掛沢断層/大野沢断層/四方原山-大上峠断層の3断層)が、さらに北へ6~7km延び、田口峠付近…

佐久の地質調査物語(地質構造―5)

(2) 褶曲構造の形成に伴い活動した 南北性の断層 断層の位置と名称 (再掲) 【 大野沢断層(おおのさわ・だんそう)】 鍵掛沢断層と平行するように、四方原山(よもっぱら)から鍵掛沢のさらに西側を経て、大野沢に延びる南北性の断層です。断層を境に、蛇紋岩…

佐久の地質調査物語(地質構造―4)

(2) 褶曲構造の形成に伴い活動した 南北性の断層 ※南北性の断層の内、「都沢断層」は、明らかに内山層の堆積した後のものであるので、 この項から外します。 南北性の断層は、褶曲構造が形成される過程で、褶曲を造った応力に耐えきれずに断層が生じたり、…

佐久の地質調査物語(地質構造―3)

3.褶曲構造と断層について 地質構造を解釈する上で、いくつかの断層を推定する必要がありました。 白亜系の延長方向に沿って延び、同時に基本的な構造を決めていると思われる「蛇紋岩帯断層」と、これを切る南北性の8つの断層があります。また、白亜系の…

佐久の地質調査物語(地質構造―2)

2.白亜系堆積盆についての考察 白亜系の褶曲構造は、南北性の断層によって切られ、いくつかのブロックに分かれていますが、全体としては、山中地域白亜系の延長方向(西北西-東南東)に沿って、蛇紋岩帯断層と交差することなく、ほぼ並行しています。そして…

佐久の地質調査物語(地質構造―1)

地 質 構 造 平成4年度の都沢の再調査から5年間の調査資料を元に、平成9年(1997年)に下記の地質図を作成しました。国土地理院発行の2万5000分の1地形図を元にしています。(調査のルートマップは、5000分の1を基本に作成していますが、大き…

佐久の地質調査物語(化石からの情報)

化石からの情報 1.石堂層から産出の動物化石 南佐久郡誌(昭和33年・藤本治義ほか)では、「石堂層」から46種類の動物化石を記載しています。この石堂層分布は、私たちの地層区分と多少異なる地域も含まれています。そこで、産地が石堂橋付近からと明ら…

佐久の地質調査物語(西端―5)

7.矢沢の調査で、ひとまずのまとめ 平成8年には、石英閃緑岩体の分布と、推定した矢沢断層の通過位置の証拠を求めて、矢沢(やざわ)の調査を行ないました。 小さな河川ながら、標高850~860m付近で、抜井川が蛇行し始めます。その矢沢集落に、東西…

佐久の地質調査物語(西端―4)

5.石英閃緑岩の採石 平成10年、11月に霧久保沢を訪れてみると、霧久保沢と林道・大日向-日影線の分岐地点付近に、採石場ができて、調査した頃と比べ、辺りの様相がすっかり変わっていました。 捕獲岩だったのか、有色鉱物の割合が多い「閃緑岩」が、…

佐久の地質調査物語(西端―3)

3.石英閃緑岩の分布とその影響 【熱変成岩】 古谷集落北側の沢の標高945mと955mの間(古谷集落北側の沢・ルートマップを参照/図版【図-③】)には、薄紫色~青緑色を帯びた光沢のある結晶質砂岩があります。この砂岩は、かなり熱変成が進んでいるよ…

佐久の地質調査物語(西端―2)

2.小川が白亜系分布の西端 井田井沢は、古谷集落の南側にある沢で、都沢から西に延びる白亜系を追跡するには、断面が観察できる条件を備えた最適な位置にあります。ところが、表土に覆われた露頭の極めて少ない沢で、わずかな情報しか得られませんでした。…

佐久の地質調査物語(西端―1)

山中地域白亜系の西端 佐久地方は、北西-南東方向に細長く延びた山中地域白亜系の西の端に当たりますが、「本当の西端は、どこか?」という点は、課題でした。そこで、平成5年に、「古谷集落北側の沢」調査(26.Sep.1993)と「井田井沢」周辺地域の調査(3.No…

佐久の地質調査物語(三山層-6)

8. 三山層堆積構造のまとめ 「ラミナが教えてくれたこと(第1章)」で紹介した、①私たちのフィールド・ネームで「ストライプ層準」や級化層理・ラミナ(葉理)、本章(第6章)で取り上げた、②フレーム現象や粘板岩の礫の位置、そして、前回紹介した、③層内滑り…

佐久の地質調査物語(三山層-5)

7. 林道「大日向-日影線」の三山層 霧久保沢入口(標高943m)と都沢下流部左岸(標高1040m付近)を結ぶ林道「大日向-日影線」が、抜井川の南に敷設されています。林道は、ちょうど2本の高電圧送電線(東京電力)に挟まれた間を、ほぼ等高線に沿うよ…

佐久の地質調査物語(三山層-4)

5.大野沢最上流部の調査から 大野沢の標高1085m付近の橋を渡り、最初の左岸側にある「無名沢」に入りました。大野沢の向斜構造の情報を得る為には、どうしても必要になる位置にあります。しかし、標高1150m二股まで踏査しましたが、全く露頭があ…

佐久の地質調査物語(三山層-3)

4.大野沢支流・1173東沢の調査から 「1173東沢」というのは、地形図の標高表示P1173の東側にあるので名付けたフィールド・ネームです。大野沢でも向斜構造が予想され、その南翼情報がなかなか入らないので、貴重な情報源となる沢でした。本流…