北海道での青春

紀行文を載せる予定

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

佐久の地質調査物語(三山層-2)

2.大野沢中流部の調査から 大野沢のイオドメ滝から第7沢合流点付近までと、大野沢林道入口~第6沢の地質は、第2章「鍵掛沢断層群」で説明してありますのて、内容を絞ります。下流から見ていきます。【下図参照】 大野沢中流部(断層で接している) 「イ…

佐久の地質調査物語(三山層-1)

三 山 層 と 堆 積 構 造 三山層は、山中地域白亜系・最上位の地層で、群馬県側~秩父地方では、厚い黒色頁岩層を堆積させた最大の堆積盆でした。しかし、第1章「都沢付近の地質」で紹介したように、佐久地域では、混濁流堆積物に特徴付けられる大陸棚のよ…

佐久の地質調査物語(瀬林層-5)

(ウ)大野沢の最上流部・大野沢林道の橋の手前露頭 橋の手前露頭では、【写真-下】のような砂泥互層部分があり、黒色頁岩層に植物化石が含まれていました。シダ植物の茎の部分のように見えました。走向・傾斜は、「N76°W・75°N」と、高角度の北落ちで…

佐久の地質調査物語(瀬林層-4)

7.瀬林層のシダ植物化石について 私たちの調査では、シダ植物化石は、次の5露頭で確認できました。 (ア) 大野沢の入口付近から大上林道沿いの ヘアピンカーブ奥の西側付近までの3露頭、【図-①・②・③】 大野沢(第1沢入口~ヘアピンカーブ付近のルート…

佐久の地質調査物語(瀬林層-3)

6.大野沢支流・第5沢付近の内山層 「ベリンジャー事件」という地質学の悲劇エピソードがあります。化石というものが、大昔に生きていた生物の遺骸であると、認識し始められてきた頃の話です。 著名な博物学者ベリンジャー(Beringer)博士は、石灰岩層から…

佐久の地質調査物語(瀬林層-2)

3.腰越沢の調査から 腰越沢の入口は国道299号線に面していて、すぐに礫岩層が見られます。礫種は、白色~黒色チャートが主体で、花崗岩や、黒色頁岩の直径2~3cmの円礫です。入口から40m入った粗粒砂岩層の泥岩との挟みで、N65°W・20°Nの…

佐久の地質調査物語(瀬林層-1)

第5章 瀬林層と内山層 瀬林層は、特異な層準で、複雑な問題を含んでいました。これは、白亜系の地質発達史から見た時、石堂層と三山層という海進期に挟まれた海退期に当たり、しかも同じ瀬林層でも、複雑な堆積環境から、地域差があったことと関連がありそ…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―4)

6.蛇紋岩礫を求めて 山中地域白亜系の南側は、多くの箇所で先白亜系や蛇紋岩体と断層で接していることがわかりました。そこで、この断層を「抜井川断層」と命名しました。また、南北性の断層(白亜系堆積後の活動)によって切られているので、それ以前に断層…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―3)

5.蛇紋岩と黒瀬川構造帯について 1994年(平成6年)、さいたま市(当時の浦和市)で、地団研埼玉大会が開催され、中・古生界プレシンポジウム『関東山地はどこまでわかったか』が行わました。その成果が、世話人会でまとめられ、地球科学49巻(1995…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―2)

3.中央構造線を挟む領家帯と三波川帯 プレート同士が衝突し、沈み込みにより、地下深部で対を成す変成帯が作られることはわかりましたが、地表に現れ、中央構造線(Median Tectonic Line)という大断層を境に接していることの説明は、不十分です。 【図・下…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―1)

1.蛇紋岩についての予備知識 平成8年12月6日、北安曇郡小谷村の蒲原沢(がまはらざわ)で、土石流が発生し、砂防ダム工事をしていた多くの方が亡くなりました。ご冥福をお祈り致します。(合掌) 普段は話題の少ない地学分野ですが、災害のたびに「津波、…

佐久の地質調査物語(軟弱砂岩・後半)

「軟弱砂岩」の枕状溶岩説 軟弱砂岩の正体として、さらに、「枕状溶岩(pillow lava)」ではないかと考えています。実は、白井層後背地の候補地と考えても矛盾しない場所に、枕状溶岩があるからです。【抜井川上流部ルートマップ】を参照。 茨口沢の対岸(南側)…

佐久の地質調査物語(軟弱砂岩の正体・前半)

軟弱砂岩の正体 他の地層と比べ、層厚もわずかな「白井層」なのに、極めて多様な岩相と分級の悪さを特徴とする『白井層の特異性』について述べてきました。その原因を、『茨口沢白井層へ堆積物を供給した後背地は、比較的近い所にあり、ある程度、風化や浸食…

佐久の地質調査物語(白井層・後半)

(3) 砂岩層の岩相変化は、堆積環境を 反映しているのではないか。 軟弱砂岩層と緑色砂岩層は、背斜構造の東西両翼に、それぞれが対応する位置にあります。対応関係が確認できるのは、ここまでですが、西翼のさらに外側にある特徴的な砂岩層の岩相と、その順…

佐久の地質調査物語(白井層・前半 )

白井層の特異性 抜井川の上流部・茨口沢(ばらぐちざわ)には、松川正樹先生(東京学芸大学)が、産出する化石を手がかりに、白井層(模式地は、群馬県)とした地層があります。 私たちは、昭和63年8月12日、松川先生に案内していただき、茨口沢を歩いていま…

佐久の地質調査物語(白井層に挑戦)

謎の多かった白井層への挑戦 平成7年6月24日に、私たちは、昭和63年度以来、わからないので敬遠したままの茨口沢の「白井層(しろいそう)」と、その周辺の調査を行ないました。そして当年度内で、佐久地域で一番古い白亜系・白井層の地質構造を解明しよ…

佐久の地質調査物語(石堂層のイメージ)

石堂層のイメージ転換 平成7年8月10日の調査での出来事です。 「アンモナイトかも知れない?」と苦労して採集した後、新三郎沢の中流部で、一休みしながら、蛇紋岩礫をめぐって論争している最中に、松川正樹先生が現れました。 「ハンマーの音は、良く響…

佐久の地質調査物語(鍵掛沢断層群)

大野沢調査から断層群が見えてきた 鍵掛沢断層の通過位置を、抜井川中流部で推定できました。そこで、同じ平成5年に、断層が北に延びると思われる大野沢の調査に取りかかりました。大野沢の下流部、第4沢、第6沢、P1173東沢です。そして、平成6年に…

佐久の地質調査物語(鍵掛沢断層の存在)

鍵掛沢断層の存在 鍵掛沢の西側に、比較的大きな断層があることは確実です。十石峠~新三郎沢と東側からの蛇紋岩露出の連続が沢の西で途切れ、さらに霧久保沢~都沢と連なる西側分布と比べ、北側に大きくずれているからです。 昭和62年8月2日の調査で、…

都沢付近のまとめ(後半)

(4)見抜けなかった上部瀬林層の欠如 都沢では、上部瀬林層が堆積していないことがわかりました。つまり、この時代、既に陸化していたという意味です。大野沢の瀬林層(上部層)からは、砂泥互層部にシダ植物の化石が確認されるのに対し、比較的露頭状態の良い…

佐久の地質調査物語(都沢付近のまとめ)

都沢付近のまとめ 地質構造の解明は、様々な情報と証拠となる事実を集めながら、明らかにしていく過程ですが、間物沢川と都沢の岩相の違いは、「三山層のゆくえ」と「隣接する瀬林層下部層の謎」で述べたように、以下のような事情があるとわかりました。 ① …

佐久の地質調査物語(下部瀬林層の謎)

隣接する下部瀬林層の謎 私たちは、都沢の下流部調査で、「佐久地域では三山層を欠いているのではないか」と、当初、間違った解釈をしていましたが、その問題は、「瀬林層上部層が欠如していた」ことで解決しました。そして、褶曲構造は、南北方向に延びる何…

調査物語(ラミナが教えてくれたこと)

三山層のゆくえ 昭和62年(1987)に、都沢と上流部尾根筋の計4回の調査を行なっていましたが、地質構造理解は、どこから手を付ければよいか見当も付きませんでした。しかし、間物沢川で見た顕著な岩相変化を手がかりにすれば、解明できそうな見通しが持…

地質調査物語(瀬林層の模式地を訪ねて)

瀬林層の模式地を訪ねて 群馬県多野郡中里村(現在は神流町中里)に、立派な「恐竜博物館」があります。近くの瀬林(せばやし)いう集落から、恐竜に関する化石が発見されたのを記念して建てられました。 漣岩(さざなみいわ)と呼ばれる漣痕化石が見られる岩盤か…

地質調査物語(山中地域白亜系について)

山中地域白亜系について 長野県南佐久郡佐久穂町大日向地区の古谷(こや)集落から、十石峠(じっこくとうげ)にかけて、白亜紀前期の地層(下部白亜系)が見られます。 この地層の分布範囲は、「山中地溝帯」と呼ばれ、群馬県多野郡神流川上流部を経て、埼玉県秩…

佐久の地質調査物語(はじめに)

はじめに 題名を『佐久の地質調査物語』としましたが、「フィクション」ではありません。ただ、物語という言葉に敢えてこだわったのは、自然科学を題材にした「易しい話」で、地質に興味のある人が、親しみを感じて読んで欲しいと願ったからです。 地質学に…