北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語-164(最終回)


          お わ り に

 

 続・佐久の地質調査物語は、その題名のように、先に山中地域白亜系を中心にまとめた「地質調査物語」の続編です。

 ブランク期間がややあって、地学委員会の調査活動に復帰した時、内山層を中心とした地質調査で、私は、異常堆積構造「コングロ・ダイク」の産状に、特に関心が向きました。それで、コングロ・ダイクの産状に焦点を当てて、内山層分布域の調査を進めてきました。調査結果から、仮説に都合の良い情報を得て、正しさを確信できたことも多くありましたが、全ての産状を説明することができませんでした。寧ろ、小規模なものの精密な産状からは、仮説の内容は無理なのかもしれないとも、思い始めています。
 それは、仮説を実証することの限界というより、仮説に無理があったのかもしれません。ただ、そう思うと、これまでの調査活動に費やしてきたことの空しさと徒労感が、どっと身に押し寄せてくるような気がします。
 一方で、自説の正否に固執しなくても、『私たちがフィールドを歩き回り、見聞きしたり集めたりした基礎資料は、何とか後世に、後輩へ残すことができたのだから、目的のひとつは達成できたのではないか』という思いもあります。特に、昨今は、地質学という分野でも、旧来のハンマーとクリノメーターを手に、地道にフィールドを歩き回る人々は、多くないようです。貴重な歴史的基礎資料になるかもしれません。
 『今は理解できないことでも、何年か後には、奇妙で不可解な露頭の謎を、もののみごとに解いてくれるのが、自然科学の歩みだと信じています』と、序文(はじめに)で書きましたが、まさに偽らざる気持ちで、自然科学の発展に期待しています。

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 ところで、第11章・地球の歴史では、視聴したNHK番組に触発され、地球生命の人類までの進化や日本列島の誕生について、まとめました。素人なりの独自資料を基本にして、まとめてきましたが、この章の内容は、インターネットを駆使して、人様の研究成果や資料の寄せ集めです。

 しかし、私が理解できなければ、わからない人も多いかもしれないという気持ちで、わかり易くすることを心がけました。
 今の地球に生命を得ている自分のありがたさに感謝すると共に、現在の科学が示してくれる、知的好奇心を、大いに奮い立たせてくれるものでした。

 その中で、新たな感慨は、『そう言えば、内山層が堆積していた時代に、日本海は拡大しつつあったんだ』と気付いたことです。高校物理の時間に、走行中の電車の中でボールを投げ上げるのを、車内で見たのと車外から見たのの、相対的な違いに気付いた心境です。
 次にまとめを計画中の内山層より新しい時代の地層は、まさに拡大の最盛期に当たります。実際のフィールドの中で、日本海の拡大中の影響が見つけられるとは思いませんが、大きなものの中で動いている、こちらもまた大きなものという多重的な現象であることに、畏れを感じながら、「続々」にも挑戦していこうと思います。

謎の多い棚倉構造線

大陸の構造線と繋がっていた日本の構造線

 

  【編集後記】

 Yahoo! JAPANのニュース記事(岐阜新聞社)で、小学6年生が、「トゲナナフシ(Neohirasea japonica)」の雄(♂)を発見したという情報を得た。

 新聞記事によると、『極めて珍しい雄のトゲナナフシを愛知県田原市の小学6年の森下泰成君(11)が21日、岐阜市大宮町の名和昆虫博物館に寄贈した。雌単体で卵を産む「単為生殖」で繁殖するトゲナナフシを約5年間飼育する中で、初めて生まれた雄の個体だ。同館などによると、これまで国内での雄の発見報告は2例のみ。名和哲夫館長(67)は「生きた状態で見るのは初めて。まだ謎が多いトゲナナフシの生態を知る上で大変貴重な資料となる」と話す。22日から公開する。トゲナナフシはナナフシの一種で、体に多数のとげ状の突起があるのが特徴。本州、四国、九州に広く分布しているが、雌の単為生殖で繁殖できるため、雄の発見例は繁殖で1件、野生の捕獲で1件のみという。

 森下君は、小学1年生の時に三重県で行われた昆虫キャンプに参加し、そこで捕まえたカミキリムシをスタッフが持っていたトゲナナフシと交換。自宅に持ち帰って飼育を始めた。毎年卵を産ませ、今年1月には7世代目となるトゲナナフシを100匹以上ふ化させた。7月6日に小さなままの1匹がいることに気付き、「もしかして雄なのではないか」と考え、別の大きな1匹と一緒に別のケースに移した。すると、2匹が交尾をしたため、小さい方が雄と分かったという。雄は体長4センチほどで、雌の約7センチと比べると、胴体が細く、一回り以上小さい。細い体の特徴から「ポッキー」と名付けてかわいがっていた森下君は「雄だと分かった時は『見つけちゃった』と興奮した。ポッキーを調べることで、これまで分からなかったトゲナナフシのことが分かるようになったらうれしい」と話す。  

 名和館長は「死んだ後は標本にし、DNA検査を行う予定。単為生殖が可能にもかかわらずなぜ雄が存在しているのか、種の根源に迫れるかもしれない」と期待に胸を膨らませた。』(岐阜新聞の記事)とある。

 このニュースを見聞きし、森下君のお父さんとか、お母さんとかも、きっと昆虫好きで、もしかすると専門家で、幼少の頃から生物に対する研究意欲に大きな影響を与えてきたのだろうなと思ったが、同時に、ひとつの事を地道に、粘り強く追究・探究していくことの大切さを、改めて教えてもらった。

 私たちも、手段こそ未熟であるが、それでも地道に佐久の地質を調べてはきたが、今はやや引退気味である。ブログに載せる内容も過去の遺物である。

 大部、体力・気力ともに衰えつつあるが、仲間を誘い、フィールドに出かけるようにしたいものである。そう思いつつ、夏野菜の手入れや収穫に毎日追われています。(おとんとろ)