第Ⅹ章 コングロ・ダイクの成因
コングロ・ダイクの産状や地域による多様性について、『第Ⅱ章コングロ・ダイクとは何か?』や、ルートマップのデーターを紹介する中で、報告してきました。
この章では、それらをまとめ、コングロ・ダイクの成因を追究していきたいと思います。
1.コングロ・ダイクの礫の特徴
(3)南部域の沢での様子をまとめると、以下のようです。
(ア)矢沢
◆珪質の灰色中粒砂岩層に入る(礫種は黒色頁岩と灰色砂岩)、内山下部層
(古谷集落北側の沢)
◆粗粒砂岩層に貫入(礫は主に砂岩)/・黒色泥岩層に入る(礫種は黒色頁岩と灰色砂岩)、 内山層下部層に3露頭
(4)内山川本流で見られたコングロ・ダイク(特異なもの)
(ア)内山川本流(大月層の分布域)
◆帯青灰色中粒砂岩層に入る(礫種は黒色頁岩、砂岩) 幅10cm×1・5m
◇細粒砂岩と中粒砂岩の互層に入る(礫種は黒色頁岩、砂岩、石英閃緑岩)、
幅10m×1m、幅10m×5m、幅10cm×6mの3露頭
(イ)内山川本流(内山層の下部)
◆石英斑岩(Quartz-Porphyry) の十字貫入とコングロ・ダイク(礫種は黒色頁岩、砂岩)
(5)コングロ・ダイクの礫の特徴
亜角礫(粒子の角が少しとれているが、完全に丸くなっていない状態)から角礫で、どの沢でも黒色頁岩片が圧倒的に多く含まれます。その他の礫は、細粒~中粒の砂岩で、全域で認められます。石英安山岩(dacite)の礫は、隣り合った沢の武道沢と釜の沢左股沢の一部で、また、明灰色凝灰質細粒砂岩は、武道沢で多かったです。
礫の最大径は、全体を平均化してあるのではなく、大型コングロ・ダイクがあると大きめに出ています。
★コングロ・ダイクの礫種に、チャート礫が含まれていないという、極めて重大な事実があります。
チャート(chert)層は、中生代の地層にも含まれていますが、古生代の地層に多い傾向があります。佐久地方では、秩父帯(古生代の地層を取り込んだ中生代付加体)の中に、チャート層があるので、中生代以降に堆積した礫岩層には、例外なくチャート礫が含まれています。
例えば、山中地域白亜系の白井層と石堂層の基底礫岩層には、多量なチャート礫が含まれています。また、その上位に重なる瀬林層と三山層の礫岩層にも、他の特徴的な岩石の礫とともに含まれています。さらに、新第三紀の内山層基底礫岩層にも、上部内山層最下部の礫岩層や砂礫岩層にも、多量に含まれています。
ところが、コングロ・ダイクの礫には、チャート礫が見当たりません。「やや珪質の」という記載もあるので、必ずしも皆無とは言い切れないかもしれませんが、とにかく無いか、あったとしても発見するのが難しいくらいの少量でしょう。
【エピソード】水平距離20mで、産状の違いを生む(柳沢の標高918m~925m) 象徴的な2露頭があります。
柳沢の標高918m付近に、この沢の最も上流で見られるコングロ・ダイクが2本(大15cm×6m、小5cm×2m)隣り合っている露頭が見られます。そこから水平距離で20mほど上流の標高925m付近には、上部と下部を分ける上部内山層最下部の礫岩層があります。この礫岩層には、円礫チャート(最大径3cm)が認められました。しかし、コングロ・ダイクの礫の中には、チャート礫はありません。こんな至近距離で、しかも層序から予想される時間的・空間的にも接近した関係にある2露頭は、チャート礫の有無に関しては、極めて大きな違いがあるのです。
チャートは、珪酸(SiO2)成分が多いので、物理・化学的にも安定で、風化・浸食に対して極めて強い岩石です。だから、礫を供給する後背地にチャート層があれば、必ず礫岩層に含まれてくる礫種の代表のはずです。それが無いか、発見しにくいということは、極めて重要な事実です。コングロ・ダイクの成因に関わって、特別な条件を想定する必要があるのかもしれません。
(6)例外的なコングロ・ダイクからの情報
コングロ・ダイクは、内山下部層で見られるのが一般的ですが、基底礫岩層(1例)、大月層(4例)、駒込層(内堀沢5例、尾滝沢1例)など、内山層以外の地層の中からも観察されました。
この事実を考え合わせると、チャート礫を含む通常の礫岩層と同じような堆積の仕方をしていないのではないかと思わせます。また、時代が前にも後にも延びる分だけ問題を複雑にします。
(7)コングロ・ダイクの礫と【ひじき構造】
全てのコングロ・ダイクの礫に認められるわけではありませんが、ホド窪沢の標高875m付近では、黒色頁岩の角礫や、引きちぎられたような細長い粒子が、礫として含まれている露頭がありました。海草のヒジキのように見えたので、「ひじき構造」と名付けました。
これは、黒色泥岩が堆積し、石化する前に破壊され、それがコングロ・ダイクの礫の中に取り込まれたことを示している。また、黒色頁岩の礫の長径に着目すると、方向がそろっているので、礫岩を作った時の水流方向に並んでいると推理できます。つまり、コングロ・ダイクの礫も、一次または二次堆積していた時は、重力方向に対して正常な堆積構造をしていたと考えられます。
【編集後記】
「佐久の地質調査物語-○○○」シリーズは、主に内山層についてまとめた内容を順番に紹介しています。100が「はじめに」で、以降、今回まで54回です。
ですから、今回だけ見た方は、「コングロ・ダイク?」と言われてもわからないと思いますので、簡単に説明します。
『コングロ・ダイク』とは、その産状の特徴をもじって、私たちが調査用に名付けた フィールド・ネームで、正式な地学用語ではありません。礫岩(コングロメレイト・ conglomerate)が、火成岩の岩脈(ダイク・dyke or dike)のように、堆積岩(主に黒色泥岩)から成る地層に対して、非調和的に貫入しているように見える異常堆積構造のことです。このコングロ・ダイクが、内山層で頻繁に観察されます。
以下の露頭は、露頭規模と明確さが顕著なので、度々紹介してきた典型的なパターンのひとつです。礫岩層が、黒色泥岩層に対して、ほぼ垂直に貫入しているように見えます。
ところで、日本選手団の活躍が期待される「北京冬季五輪」や、どこまでが真実なのかわからないまま懸念している「ロシア軍のウクライナ国境付近での訓練(侵攻の準備なのか?)などの動向」も、大きな関心事ですが、それにも増して、ここ最近、噴火活動や地震の話題が多いです。
(ア)トンガ王国の首都ヌクアロファの北65kmほどに位置する海底火山「フンガトンガ-フンガハアパイ」が噴火して、それに伴う火山灰、地震被害、津波被害が発生しました。噴火は、日本時間で1月15日の13時10分頃と言われます。M9・5
その後も、トンガ北部で、深さ4.2kmを震源とするM6.2の地震が発生しました。(1月27日)
(イ)九州の日向灘(N32・7°・E132・1°)の深さ45kmを震源とするM6.6の地震が発生しました。(1月22日、午前1時8分)最大震度は、5強です。(大分市・佐伯市・竹田市・延岡市・高千穂町など)私たちの住む佐久市では、人体に感じるような揺れは伝わってきませんでしたが、発生時刻が深夜なので、実際の被害に加え、心理的にも恐怖だったと察します。
今回の地震は日向灘に沈み込む海洋プレートの内部で発生した地震と考えられるため、南海トラフ地震とはメカニズムが異なり、震源や規模をみても南海トラフ地震への影響はほとんどないと、専門家は見ているようです。
日
(ウ)鹿児島県の十島村「諏訪之瀬島の御岳」で1月24日の午後11時までに爆発が168回あった。2002年の爆発回数の観測開始以来、1日当たりの爆発が最多となったと言う。1月29日は、中程度の噴火が3回であったようだ。
何んと鹿児島市の「桜島・南岳山頂火口」でも、新年になってから4回目の噴火があった(1月29日)とありました。
私たちが毎朝夕、眺めている浅間火山も、信濃毎日紙上の噴火警戒警戒情報などを見ながら、現在は僅かに噴煙が上がるのを散歩の折りに確認しています。
必要以上に不安がることは必要ないかもしれませんが、相手が大自然の地殻変動なので、どうしようもなく、ひたすら安寧を祈るしかありません。(おとんとろ)