北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語 第200回(はじめに)

                            は じ め に

 題名を『続々・佐久の地質調査物語』としましたが、「山中地域白亜系」を扱ったものが最初で、次に「内山層」を扱いました。そして、今度のシリーズが、それよりも新しい時代の「駒込層・八重久保層・香坂層」等について語るので、三番目の意味で「続々」となります。
 尚、「物語」と名付けましたが、「フィクション」ではありません。ただ、物語という言葉に敢えてこだわったのは、自然科学を題材にした易しい話で、地質に興味のある人が、親しみを感じて欲しいと願ったからです。
 地質学に限らず、学術論文は難しいです。対象とする人のレベルや目的から仕方のない事情もわかりますが、もう少し私たち素人にもわかるように伝えて欲しい。また、一枚の地質図にしても、苦労して作られているはずなのですが、その大変さは見えてきません。そこで、地質調査がどんな風に進められてきたか、そこには、どんな失敗や人間ドラマがあったのか、そんな裏話やエピソードを知れば、マイナーな地質学の話題も面白くなるのではないかと思いました。
 そして、もうひとつの願いは、観察者としての記録を後世に残したいと思います。
 調査活動を通して得た実感は、『知りたい、見つけたい』と念じても、期待する対象物は容易に見つけられないことが多く、反対に、見てもわからないことだらけです。だから、私たちがフィールドを歩き回り、見聞きしたり集めたりした基礎資料は、何とかして後世に、後輩へ残すことに大きな意義を感じます。今は理解できないことでも、何年か後には、奇妙で不可解な露頭の謎を、もののみごとに解いてくれるのが、自然科学の歩みだと信じています。
                                    *  *  *

千曲川の御影橋下流-① 

 

 【写真-①】は、台風19号(2019.10/12~13)で川底が埋まった千曲川の中州に重機が入って整備した後の姿です。撮影は、2024年1月6日です。
遠くに見えるのは、重機で片づけられなかった巨礫で、手前が瀬です。
 整備されたばかりなので、川底は全面が平らで、どこもほぼ同じ流速で流れています。この後の河川の歴史の中で姿を変えていきます。

 

香坂ダムの上流(香坂礫岩層の巨礫)-②

 【写真-②】は、香坂川の片替橋上流25m付近の巨礫で、「香坂礫岩層」のメンバーです。
転石かと思うほどでしたが、「内山層」基底礫をしのぐほどの大きさです。巨礫(安山岩)の下も、礫岩です。撮影は、2013年5月19日です。

 現在の産状だけみると、川底に張り付いた巨大な岩の塊ですが、千曲川のものは、
この先、流されて移動するかもしれません。
 一方、香坂川のものは、河川の規模からかなりな確率で無理でしょう。
 既に、400万年前には、香坂礫岩層の中に取り込まれ、ずっと存在してきました。ただし、風化・浸食は受けていますが・・

 こんな風に、現在の地表にある岩石や地層を見ていくと、興味深い事実があり、壮大なドラマを創造することができます。

 

    もくじ

 

○ はじめに

第1章 日本列島の成り立ち
 ◇日本列島の広がり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1
 1.「プレート・テクトニクス」と「プルーム・テクトニクス」・・P2~P3
 2.「付加体」という考え方の証拠・・・・・・・・・・・・・・P4~P5
 3.他の構造帯の「付加体・メランジェ」について・・・・・・・P5~P6
 4.日本海の成り立ち・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P7~P8
 5.大和堆の存在と、日本海を拡大させた営力・・・・・・・・・P9~P10


第2章 佐久地方の新第三系

 1.日本海拡大前の「山中地域白亜系・佐久地域」・・・・・・・P11~P12
 2.日本海のでき始めの頃と「内山層」・・・・・・・・・・・・P12~P13
  ◇ 表-「山中白亜系を中心とした佐久地方の地質」・・・・・・P14
   ◇ 表-「中新世~第四紀の佐久地方の地質概要」・・・・・・・P15

第3章 志賀川~香坂川の地質

  ○ 志賀川・香坂川流域の地質調査へ・・・・・・・・・・・・・P16~P17
 1.志賀川流域の地質・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P18~P19
       (1)八重久保断層は確認できた・・・・・・・・・・・・・・P20~P21
   (2)研究者の間でも問題の多い八重久保層・・・・・・・・・P22
 2.瀬早川流域の地質・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P23~P26
 3.八重久保層の層序・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P26~P27
 4.八重久保層・上部層のゆくえ・・・・・・・・・・・・・・・P28~P33
 5.「八重久保層・上部層」の層序と地質構造 ・・・・・・・・・P33~P36
 6.「南沢林道の沢」の調査から・・・・・・・・・・・・・・・P37~P39         

 7.霞ヶ沢の調査から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P40
 8, 「香坂川~霞ヶ沢の東・無名沢」の調査から・・・・・・・・・P41~P43 
 9.「香坂礫岩層」の分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・P44~P46 
10.香坂川の上流部の調査
      ○香坂川上流部~最上流部のルートマップ・・・・・・・・・P47
      (1)香坂川支流第3沢の調査から・・・・・・・・・・・・・P48~P49
      (2)香坂川支流第1沢・第2沢の調査から・・・・・・・・・P50~P52
      (3)香坂川支流第5沢から妙義荒船林道の調査から・・・・・P53~P56
      (4)最上流部・香坂林道の調査から・・・・・・・・・・・・P57~P59

第4章 兜岩層と本宿層

 1.兜岩層の湖成層・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P60~P61
 2.兜岩層の湖成層の下にくる層準
   (1)舘ヶ沢の観察から・・・・・・・・・・・・・・・・・・P62~P63
    (2)牛馬沢の観察から・・・・・・・・・・・・・・・・・・P63~P64
   (3)小屋場付近から・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P64
   (4)熊倉川の調査から ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・P65~P66
 3.「本宿層」とは? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P67~P68
  4.陥没盆地について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P68~P69
  5.兜岩層と本宿層(本宿層群)の関係について・・・・・・・・・P70~P72

 

 編集後記

 これから、「続々編」として『佐久の地質調査物語』を、「はてなブログ」に載せていきます。

 実は、この内容の元原稿は、2022年(令和3年)~2023年(令和4年)に出来上がっていて、令和5年4月から手掛けることを決めていましたが、なぜか意欲が沸いてこなくて、その後、1年近く停滞していました。

 理由は、この地域の露頭が少なく、正確な地質図が作れないので、「次は、この沢へ行ってみよう」というような気持になれなかったことがひとつの理由です。ふたつ目は、定年退職後、10年も経つと、だんだん怠けた生活になりがちで、学術的な方向への意欲も減退気味になっています。

 ところが、詳しい訳は機会があったら触れますが、「せっかく元原稿があるのだから、最新情報を入れながらまとめてみよう」という気持ちになりました。

 それで、2022年に「内山層」に関するシリーズが、第100回~第164回で終わっているので、数字を続けると混乱するから、第200回をスタートとして行こうと考えました。

 既に、「もくじ」もあるので、掲載します。ただし、これから毎回、元原稿の清書や点検、画像の確認などをしながら、まとめていきますので、増えるかもしれないし、減るかもしれません。

 現時点での課題は、「佐久側の地質と本宿地区の地質の関係は?」という所で、2年以上停滞しています。やって行く中で、解決に向かうことができることを期待しています。

 尚、原稿の内容については、各シリーズの「はじめに」などで紹介したように、調査した「ルートマップ」や撮影した「露頭写真」・「化石や自然に関する写真」を中心にまとめています。「夏休みの自由研究」の観察ノートという発想です。

 いつか、もう少し、専門家の方に見てもらって、専門誌にも提出できる形にまとめたいと考えてはいますが、どんどん年齢も増えていってしまうので、そこまで脳と意欲が耐えられるか不安はあります。

 

 最後に、数年来、月1回ぐらいの割合で、「〇〇月の俳句」シリーズが中心でしたので、そのギャップに驚かれる方もいるかもしれません。でもまあ、両方が趣味であり、関心事ですので、ご了承ください。   (おとんとろ)