北海道での青春

紀行文を載せる予定

初夏の彩り(皐月の句)

 ① 山に立つ 変化自在の 初夏の雲

 ② 香を残し 風神渡る 青田かな

 ③ 万緑の 中でささやく 鳥語(とりご)かな

 

 佐久地方は、春の訪れから本格的な春へと進む頃までは、季語と暦が合わない感じだが、5月になると全国版と一致する。ひと昔より田植え時期が早まったので、見渡す佐久平は早苗で水面が隠される。盆地を取り巻く山々も緑が深まり、初夏の気配が感じられる。そんな活動的な場面を俳句にしたいと思った。

 

 【俳句-①】は、俳句をひねる為に縁側に腰掛け、西山に立ち上がる積乱雲や晴れ積雲を見て詠んだ。好天に恵まれた日は、時として5月でも真夏の空を想像させるようなことがある。

 特に、「変化自在」と表現するのは、雲は上昇気流や上空の風向きで、雲(露点に達した小さな水滴や氷粒)が消長する現象を絶えず続けているからである。だから、それを観察していると、大気の動きが想像できておもしろい。

 何の予備知識もなければ、上空の熱気球をただ美しいと眺めているだけだが、乗組員と補助員らは、雲の様子から風の動きを読んで、気球を操縦しているわけだ。
 野良仕事も本格化してくる時期だが、のんびりと雲の動きを見ていた。
 (ちなみに【写真】は、同僚の結婚式が車山高原のホテルであった6月初旬に、撮影したものである。)

 

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車山高原からの八ヶ岳(左に蓼科山、右に富士山も臨めた)

 


 【俳句-②】は、畑作業での休憩中、田植えの済んだ水田の早苗を眺めていた時の光景である。水田地帯の一画を、転作して夏野菜とネギ・ニンニクを植える畑にした。

 「風薫る五月」とは言うものの、寧ろ、春先の疾風は土埃が混じった感じの匂いがするが、五月の風は優しい。

 俵屋宗達の風神の袋から出た優しい風が青田を渡っていくと、早苗が揺れて、まだしっかりと見えている水面には、細波が立つ。これから、収穫の秋の黄金色に輝く実りの日に向かい、スタートを切ったばかりの水田風景は、初々しい。

 


 【俳句-③】は、初夏の庭に出たら、自宅の生け垣と、近くの公園の「チャボヒバ」の立木の中に野鳥がいて、互いに囀(さえず)っていることを詠んだ。

 「雑草」と愛らしい草を呼んでしまう時の申し訳なさと同様で、鳥の種類はわからない。しかし、それ故、良く意味が理解できない早口の外国語を聞いたようで、真剣に聞き取ろうとする地球上の鳥語(とりご)である。

 里山の万緑の中で、元気いっぱいで、愉快そうな鳥グループの語らいであった。

 

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チャボヒバの立木

 【編集後記】 

 今日は、祝日「海の日」、そして、明日は「スポーツの日」である。コロナ禍がなければ、2020TOKYO オリンピック(夏季大会)の開会式が行われていた。来年には、大会が開かれるので、楽しみは持ち越しだと思って自身を納得させるが、一抹の不安もある。

 ところで、オリンピックの開催に関して、返す返す残念なことは、大会の放映権を獲得した企業やその国のスポーツ等の事情から、一番暑さ厳しい真夏に東京大会が開催されることである。

 前回・昭和39年(1964年)の東京大会の開会式は、10月10日の晴れの特異日が採用された。日本は、秋(中秋~晩秋)もいいが、この初夏・五月も、とても良い季節だ。日照時間が長く、気温も適温である。さらに、爽やかで湿度の低いことも素晴らしい。開催国にとって、選手を含め、多くの外国の方々に、一番来て欲しい、お勧めの時期に開催というのは、夢物語なのだろうな。 

 

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ヒマラヤ原産の青い芥子の花

【写真】は、同僚の結婚式が車山高原のホテルであった6月初旬に撮影したものです。