北海道での青春

紀行文を載せる予定

初夏の山里(皐月の句)

① 匂い立つ ニセアカシアの 曇り空

② 時空越え カッコウの歌 蘇(よみがえ)

③ 初夏の道 ヒジャブの奥の 眼におじぎ

 


 退職してから始めた夏野菜作りだが、その準備を急ぐあまり、遅霜や強風被害にあって二度手間となったことを経験している。山(向山の畑)と田圃(森上の畑)の2つの畑を耕作するようになって3年目の今年は、定植を開始するのをじっと待つことにした。

 5月の声を聞くと、佐久地方でも農作業が日課になる。今月は、初夏の山里での日常を俳句にしてみようと思い、挑戦してみた。

 

 【俳句-①】は、ニセアカシアの花の蜜の匂いで山里が、霧の中に入ったかのように覆われる頃、花の色と高曇りの空の、薄ぼんやりとしたモノトーンが放つ、独特な風情を詠んだ。青空よりも、くすんだ花の色合いと、曇り空が寧ろ落ち着いた感じがする。

 多分、ニセアカシアが、青空より曇り空の方が似合うと思ったのは、木のもつ雑なイメージだ。ちょっと目を離した耕作地や堤防沿いの荒れ地に、木々は逞しく繁茂する。
反面、材木や杭木に利用しようとすれば、耐久性が無い。お荷物君である。

 畑仕事をしていて、こんな逞しい雑草類が食用野菜なら、どれほど助かるかと思う時と、まったく同じ思いがする木である。誠に身勝手で申し訳ないと思うのだが・・・。

 

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ニセアカシアの花

 【俳句-②】は、久しく聞けなかった郭公(カッコウ)の鳴き声を発見し、一気に懐かしい風景が蘇ったことを詠んだ。

 子供の頃の薬師堂の山、北大恵迪寮の林で、良く聞いた。鳴き声に風情はあるが、四六時中鳴かれると騒音という感覚にもなる。それが、託卵という習性が原因してか、
ここ十数年間、我が家付近では、鳴き声が途絶えていた。それが時間と空間を越えて、昔の鳴き声を再現してくれた。

 ところで、私はもう一度、ぜひ逢ってみたいと思う鳥たちがいる。

 雲雀(ヒバリ)と隼(ハヤブサ)である。雲雀は北大農場の麦畑で見た。春を詩人が詠った通りの幼いかわいさ、健気さだった。なぜか、佐久地方ではあまり見かけないので、とても新鮮だった。

 隼は、札幌近郊の山中を散策していて、墜落する爆撃機を目撃したような感想をもった。近年、川の近くで農作業中に、カワウが急降下してきたのを目撃したことがあるが、ハヤブサには、はるかに及ばないものの、やはり翼での風切り音は、異質で不気味な音であった。

 奇妙な例えだが、天才少女歌手・美空ひばりが、永遠の大歌手・美空隼と改名するようで、人生の大成長が、雲雀と隼という鳥のメージを使って表現できるほど、強烈な印象となって残っている。

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オオヨシキリの雛に餌を運ぶカッコウの親

 【俳句-③】は、近所のSさんという女性が、農作業用・日焼け防止に厳重な装備をしていて、すれ違って挨拶を交わした時の可笑しさを詠んだ。
 ヒジャブというのは、布を頭から巻き付けたイスラム圏の女性の服装である。厳密に言うとSさんの姿は、戒律の最も厳しい「ブルカ」に近いのかもしれないが、目だけを露出させていた。

 初夏の晴れた日の農作業で、紫外線対策は十分過ぎることはない。肌にUVカットクリームを塗るだけでなく、頬も布で覆い反射光も遮るようにする。サングラスをして、白内障緑内障対策もする。

 ところで、挨拶する際、人は目を見て「おじぎ」をするものらしい。Sさんの隠れた奥の方の両眼と視線が合った。どこか気恥ずかしい気もする。Sさんも自身の必要以上に過剰な防備に照れている風もあり、可笑しく感じる部分もあったのだろう。

 印象的な初夏の農道での出会いだった。

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ヒジャブを着用した女性

 

【編集後記】

 かなり前のこととなるが、フランスの公立学校で、イスラム圏の女子生徒が、「ヒジャブやブルカ」のような伝統的服装をして登校するのを禁止するか否かという話題で盛り上がった。(正式には知らないが、特定な場所では禁止の方向になったらしい。)

 私が想像するに、伝統的な服装という観点より、『顔が他の人から見られないように覆うこと』が、欧州の文化や「自由」に馴染まないで、「自由でないこと(不自由ではない!)」の象徴と映ったからだと思う。

 さて、今や「コロナ禍」の時代。感染予防および感染拡大防止の為に、様々な色や形のマスクを着用した人々が、世界中の通りや建物の中を歩き回っていることと思う。

 疫病対策という大義名分は、大きいが、顔の一部を覆い隠すという行為には、あまり差がないのではないか。どのように受け止めているのだろうか?

 ・・・・私の感想:「白いマスク」には違和感を感じないが、様々な模様や色の付いたマスクは、ちょっと気に掛かる。そして、「黒いマスク」は好きになれない。

 まったく、私の趣味なので、どうか気にしないでください。