北海道での青春

紀行文を載せる予定

夏の大自然(文月の句)

① 雲仰ぎ 音高らかに 胡瓜(きうり)食む

② 島雨林 警報超える 蝉時雨(せみしぐれ) 【三宅島にて】

③ 遠雷や 地震の如く 指を折る

 

 7月の句会は、暑気払いを兼ねて、小海リエックス・ホテルで開いた。昼食会の後、深緑に囲まれた露天風呂に入り、佐久平浅間連峰の眺望を愉しんだ。
 吟行した人もいたが、私は予め、夏の季語を選んで用意していった。

 

 【俳句-①】は、取れたての胡瓜(キュウリ)をかじりながら、畑で空を仰ぐと、入道雲が見えた時の感動を詠んだ。
 生野菜を豪快に食べる時の歯切れの良い音は心地よい。入れ歯はあるが、堅いものも十分に丸かじりできる。野菜の初物や貴重な時期だと工夫して食べるが、最盛期は、食べ飽きる感もある。自分の育てている畑から採ってくれば、いくらでもあるが、せっかくの天の恵みと思うから、捨てるわけにもいかず、少々無理しても食べる。

 そこで、昨今、塩分の摂り過ぎが話題になるので、生味噌は止めて、香辛料入りの特製たれを使う。手作り、無農薬野菜の楽しみ方である。

 ちなみに、【写真】は、先輩の創作焼き物と、私の俳句を飾った玄関である。

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玄関に自作の俳句を飾る

 

【俳句-②】は、佐久地方で経験する普通の蝉時雨ではなく、太平洋上の森林では、音波が槍のように頭や鼓膜を刺す体験した驚きを詠んだ。

 「島雨林(しまうりん)」なる変な造語も使っているので、読み手に内容が伝わらなかったのも無理はない。

 平成24年夏に、信州理研の仲間で三宅島の自然研究に出かけた。「アカコッコ館」を訪れた後、周囲のスダジーなどの森林を散策した。洋上の火山島は、気温・湿度が高く蒸し暑いので、熱帯雨林をもじって「島雨林」とした。

 その森で、蝉・時雨警報を越える、音の嵐を初体験した。

 音は物理的刺激のひとつだが、何千匹もの蝉が発する鳴き声は、針で刺される刺激になっている。耳ばかりか頭も刺される。真夏の佐久地方でも「しぐれ」と表現するほどなので、十分な騒音なのだが、その比ではなかった。

 (ちなみに【写真】は、小型のチッチゼミの抜け殻、これも蝉時雨の一員だった。珍しいので記録した。)

 

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「チッチゼミ」の抜け殻

 

 【俳句-③】は、雷雲の襲来で、雷鳴が聞こえてくると、「どのくらい離れているか」と発生源までの距離を推測する様子を詠んだ。私の俳句は、科学知識をひけらかす傾向があるようで、時として読み手に理解されないことも数多い。

 地震に気づくと注意深く揺れを体感しながら、初期微動継続時間(秒)から、震源までの距離を予測し、ラジオ放送で確認する。代表的な地震波のP波とS波の速度差で、わかる原理である。

 雷の場合、光速の稲光と音速の雷鳴の差だが、光速は30万㎞/秒と圧倒的な高速で、瞬時のことなので、音速だけがわかれば良い。V=331・5+0.6t(m/秒)に気温t℃を代入する。光ってから雷鳴まで3秒間で1kmぐらいだ。

 夏の遠花火でも、同じ原理が使える。千曲川河川敷で打ち上げられた煙火は、数秒して山里で反響する。緊張して指を折って数えてみるのも、せいぜい1~2回くらいかな。

 

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小海リエックス・ホテルにて

 

 【編集後記】

 連日の猛暑(正しくは真夏日)で、比較的過ごしやすい地域に住んではいるものの、農作業は控えて、せいぜい夏野菜の収穫ぐらいの毎日を過ごしてきた。ようやく、外での作業も可能になってきたので、午前と午後、2時間ずつ、草刈り作業から始めた。

 お盆があるので、少し前から計画的に草刈りをしたり、庭の芝生や家の周囲の草取りをしたりしてきた。しかし、2週間も経っていないのに、完全に元に戻っている。

 日本の夏のすごさであり、草木の生命力にも驚かされる。以前、学校に派遣されてきていたAET(米国人男性)の方が、『私の故郷の夏のイメージは、茶色です。』と話されていた。あまりの日射と乾燥で、草木が枯れてしまうからだそうだ。

 日本の夏は、猛暑日でも、時々は雷雨がある。佐久地方全体では、激しい雷雨も何回かあったが、『夏の雨は馬の背を分ける』と言うくらいで、私の住む地域では、ほとんど雷鳴だけで、お湿り程度だった。(激しいのは、一度だけ。)

 だから、今年は雨の少ない年だなあと感じている。もっとも、梅雨の時期に、例年の倍近く降っているので、トータルでは帳尻が合っているのだろう。