北海道での青春

紀行文を載せる予定

正体を知る三題(前半)

① 山路暮れ ほろろ打つ怪 雉子と知り
② 夫婦(ふたり)して すまして写る 薔薇皇女(ばら・こうじょ)
 鎌音に 滑り出ず蛇 ヤマカガシ(赤楝蛇) 

 

 御代替わりで、今年は特別に10連休となったが、長女夫婦と孫たちは、何と10日間、我が家で過ごすことになった。ふたりの孫との交流もあって、嬉しいことも数多かったが、少々有り難迷惑であったことも否めない。彼らが去って、ようやく静かな日常生活が戻り、農作業が楽しみになってきた季節を迎えた。

 今月は、前橋市薔薇園と山里での体験から、『その正体を知って驚いた』という感動場面を俳句にしてみることにした。


 【俳句-①】は、夕方の山路で怪しい不気味な音がして、それが雉子の羽ばたき(ほろろ打つ音)と知って、感動したことを詠んだ。

 日の長い時期なので、十分に明るい夕暮れではあったが、初めて聞く奇怪な音に驚き、耳に神経を集中させていた。『ケーン、ケン』という雉子の鳴き声と共に、雉子のつがいの姿を目撃して、納得した。

 子供の頃に読んだ本の中で、夜道に山鳥の羽ばたく音や、月光に怪しく光る羽の話題が、怪談話のように出てきたのを覚えているが、実際に聞いてみると、確かに不気味である。そして、正体がわかって安心した。

 『雉子も鳴かずば撃たれまい』とか『焼け野の雉、夜の鶴』とか、少し古風な生活教訓を見聞きしたこともあるが、雉は日本の国鳥でもある。

 

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雉子(キジ)の雄

 

 

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雉子の番(つがい)



【俳句-②】は、群馬県前橋市の薔薇園を訪れた時、新種改良した数々のバラには、それぞれ謂われのある名前が付けられていることを知り、その感動を詠んだ。

 毎年、五月連休明けの天気の良い日を選び、花好きな母と妻を誘い、日帰りできる植物園などを訪ねることにしている。今年は、前橋市の敷島薔薇園にした。当所は600種・7000株以上の世界のバラが栽培・展示されている。

 私たちが「薔薇」と呼ぶ花は、植物分類上のバラ科(Rosaceae)・バラ属(Rosa)で、綺麗な花は新種改良が進み、非常に多くの種類が作られている。そして、様々なエピソードや王室・皇室の女性に因んだ名前(俗名)が付けられている。

 日本の皇室の皇女もあって、感動した。(例えば、愛子様)
 ネーミングで、『青い氷山(blue iceberg)』とか『山椒薔薇(サンショウバラ)』には驚いた。

 夫婦(ふたり)の記念撮影を、来園者に頼んで撮してもらったバラの花は、皇女ではなかったが、少し緊張して、すました表情だった。
 (少し前までは、母に撮影を依頼したが、最近は、無理なようである。)

 

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プリンセス・愛子(aiko

 

【編集後記】

  子どもの頃、飼っていた鈴虫は、産卵時期になると栄養補給の為に、雌が雄を食べてしまうからと、鰹節を餌の胡瓜といっしょに入れて飼育したことがあります。子ども心に、生物界は、雌(♀)が中心なんだと思いました。

 そんな観点から見ると、雉子の番の外見は、雌が地味で、雄が派手過ぎます。もし、人間で、番の雉子のようなカップルを見たら、二人の関係について疑問を持ち、普通の夫婦にはない違和感を感じることでしょう。でも、生物界では、雄が雌の関心を引きつける為に、華やかな容姿や色彩、デスプレー、闘争力を示すのは良くあるパターンのようです。

 ところで、日本の国鳥をキジと定めた「日本鳥類学会(昭和22年)」は、その選定の理由を以下のようにあげています。

 ① 緑色のキジは日本の特産である(日本の固有種)

 ② 年間を通して見られる鳥である(留鳥

 ③ メスは母性愛、オスは勇気に富んでいるとして知られている(諺など) 

 ④ 生活圏で見られる、身近な鳥である(田舎ではよく見られる)

 ⑤ 昔話などに登場し、子供にとっても なじみ深い鳥である(桃太郎など)

 日本の固有種でも、朱鷺(トキ・学名「Nipponia nippon」)のように、いくら稀少種でも、滅び行きそうな種が国鳥では心許ない。国民の意見を聞けば、『鶯がいい』・『雲雀がいい』などという個人的意見もあり、はたまた、烏や鳶・雀なども候補に挙がるかもしれない。

 日本列島に生息する鳥類、夏鳥・冬鳥、人々の思い入れの鳥類、たくさんの鳥の中から選出するのは大変だったと思う。