北海道での青春

紀行文を載せる予定

青梅・三題(水無月の句)

 ① 青梅載せ 籠(かご)が家族の 席を埋め

 ② 青梅(あおうめ)の 荷を解く枝や 風に笑む

 ③ 縁側に 青き漬け梅 金字塔

 

 天気予報を見ると、高気圧の中心は銚子沖の太平洋上に移り、停滞前線の北上で、西日本から雨の範囲が広がってくる。今晩から翌朝にかけて雨が降るというので、午前中に、梅の実を収穫することにした。幸い晴天に恵まれ、収穫量は、およそ20kgであった。(6/12)

 翌日から、青梅を洗ったり干したりして、「梅漬け」と「焼酎漬け」の準備に取りかかった。それで句会(6/17)には、青梅を題材にして俳句を創作することにした。

 

 【俳句-①】は、青梅の果実を外流しで選別しながら洗った後、台所の流しでもう一度洗い、それを竹籠に入れて置いた時の光景を詠んだ。収穫量が多く、一気に処理したので、青梅を入れた容器をあちこちに置いた。ついには、食卓の上も占領されてしまうこととなり、家族の座る椅子やテーブルさえも、無くなってしまうほどだった。席を「埋め」と、「梅」が掛詞になると洒落てみたが、俳句では受けないらしい。

 

【俳句-②】は、青梅を収穫した後、私が梅の木に同情した擬人法の俳句である。句会の仲間に、わかってもらえなかったようなので、これも説明が必要だ。

 家敷内(1本)と、堂入(どうり)の畑の梅の木(5本)から取れる全収穫量の8割は、畑の一本の老木が担っている。だから、梅の実が、たわわに実ってくると、果実の重さで横枝はしなって、最先端は地面に届いてしまうかのようにかしがる。

 管理する私の老齢化を見越して、上へは伸ばさず横に広がるように、梅の木を剪定しているのだが、まだ2年しか経っていないのに、梅に勢いがあり、収量の増加による横枝の撓(たわ)みが顕著になった。

 『苦労かけてるね。もうじき、荷を解くから、もう少し我慢して待ってて』と、
そんな気持ちで、老梅木の成長を見守ってきたが、重荷を解く瞬間がやってきた。すなわち、青梅を収穫することで、過酷な重力から解放される。

 収穫が済むと、横枝は地面から顔を上げて背伸びするかのように、立ち上がり、そよ風に枝葉は揺れた。その光景は、山小屋に荷揚げする歩荷(ぼっか)が、重荷を下ろして一息つき、吹いてくる風に涼んでいる姿と、妙に重なって見えた。

 歩荷も嬉しいかもしれないが、それを見ている私も心和み、嬉しくなる。若い頃は山好きで、そんな実際の場面にも出会った。彼らに寄せた思いとも共通して、青梅の実りへの感謝と共に、梅の老木を労う気持ちにもなっていた。 

 だから、「風に笑む」のは、梅の木であり、また、それを見ている自分でもあるわけだ。

 

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青梅の実


 【俳句-③】は、縁側に茣蓙(ござ)のような敷物を敷いて、その上に収穫した青梅の入った籠をかしげると、ピラミッドのような梅の山ができた。そんな姿を素直に詠んだ。
 『金字塔を打ち立てる』という言い方がある。社会的には、ささやかな青梅の収穫に過ぎない小事だが、私にとっては、梅の本格的な管理を始めて二年が過ぎ、ようやくこれだけの青梅の収穫ができたことへの自信と、ちょっぴり自慢したくなるような瞬間だった。  

  振り返れば、根の周囲に藁を敷いたり、肥料を入れたり、晩秋には枝の剪定もした。また、木の幹や枝に、カビか発生していたのを、丁寧に擦り落としたり、剪定して取り除いたりもした。

 丹誠込めた成果かもしれないが、他にも要因がありそうだ。畑の少し上に中部横断自動車道路が整備(平成27~30年)された。それまで染み出ていた地下水を集めて排水溝に流したことで、我が家の畑が乾燥してきたことが、梅の木々の良い生育環境となったのかもしれない。

 

【編集後記】

 私は、その月のテーマを決めて、「○○三題」というような俳句の詠み方をすることが多いが、なるべく特定な「季語」に重ならないように心がけている。しかし、どうしても生活体験での感動を俳句にすることが多いので、コロナ禍で中断していて再開した今年の6月の俳句にも、「梅をとる」を選んだ。

 佐久地方での梅の収穫時期は、6月中~下旬になる。梅雨の時期と重なる。停滞前線の動きに合わせて、梅雨の晴れ間を狙って収穫している。今年は、他の若木の収穫量も多くなり、やや大変な作業になってきた。