北海道での青春

紀行文を載せる予定

佐久の地質調査物語(地質構造―5)

(2) 褶曲構造の形成に伴い活動した 南北性の断層 断層の位置と名称 (再掲) 【 大野沢断層(おおのさわ・だんそう)】 鍵掛沢断層と平行するように、四方原山(よもっぱら)から鍵掛沢のさらに西側を経て、大野沢に延びる南北性の断層です。断層を境に、蛇紋岩…

佐久の地質調査物語(地質構造―4)

(2) 褶曲構造の形成に伴い活動した 南北性の断層 ※南北性の断層の内、「都沢断層」は、明らかに内山層の堆積した後のものであるので、 この項から外します。 南北性の断層は、褶曲構造が形成される過程で、褶曲を造った応力に耐えきれずに断層が生じたり、…

佐久の地質調査物語(地質構造―3)

3.褶曲構造と断層について 地質構造を解釈する上で、いくつかの断層を推定する必要がありました。 白亜系の延長方向に沿って延び、同時に基本的な構造を決めていると思われる「蛇紋岩帯断層」と、これを切る南北性の8つの断層があります。また、白亜系の…

佐久の地質調査物語(地質構造―2)

2.白亜系堆積盆についての考察 白亜系の褶曲構造は、南北性の断層によって切られ、いくつかのブロックに分かれていますが、全体としては、山中地域白亜系の延長方向(西北西-東南東)に沿って、蛇紋岩帯断層と交差することなく、ほぼ並行しています。そして…

佐久の地質調査物語(地質構造―1)

地 質 構 造 平成4年度の都沢の再調査から5年間の調査資料を元に、平成9年(1997年)に下記の地質図を作成しました。国土地理院発行の2万5000分の1地形図を元にしています。(調査のルートマップは、5000分の1を基本に作成していますが、大き…

佐久の地質調査物語(化石からの情報)

化石からの情報 1.石堂層から産出の動物化石 南佐久郡誌(昭和33年・藤本治義ほか)では、「石堂層」から46種類の動物化石を記載しています。この石堂層分布は、私たちの地層区分と多少異なる地域も含まれています。そこで、産地が石堂橋付近からと明ら…

佐久の地質調査物語(西端―5)

7.矢沢の調査で、ひとまずのまとめ 平成8年には、石英閃緑岩体の分布と、推定した矢沢断層の通過位置の証拠を求めて、矢沢(やざわ)の調査を行ないました。 小さな河川ながら、標高850~860m付近で、抜井川が蛇行し始めます。その矢沢集落に、東西…

佐久の地質調査物語(西端―4)

5.石英閃緑岩の採石 平成10年、11月に霧久保沢を訪れてみると、霧久保沢と林道・大日向-日影線の分岐地点付近に、採石場ができて、調査した頃と比べ、辺りの様相がすっかり変わっていました。 捕獲岩だったのか、有色鉱物の割合が多い「閃緑岩」が、…

佐久の地質調査物語(西端―3)

3.石英閃緑岩の分布とその影響 【熱変成岩】 古谷集落北側の沢の標高945mと955mの間(古谷集落北側の沢・ルートマップを参照/図版【図-③】)には、薄紫色~青緑色を帯びた光沢のある結晶質砂岩があります。この砂岩は、かなり熱変成が進んでいるよ…

佐久の地質調査物語(西端―2)

2.小川が白亜系分布の西端 井田井沢は、古谷集落の南側にある沢で、都沢から西に延びる白亜系を追跡するには、断面が観察できる条件を備えた最適な位置にあります。ところが、表土に覆われた露頭の極めて少ない沢で、わずかな情報しか得られませんでした。…

佐久の地質調査物語(西端―1)

山中地域白亜系の西端 佐久地方は、北西-南東方向に細長く延びた山中地域白亜系の西の端に当たりますが、「本当の西端は、どこか?」という点は、課題でした。そこで、平成5年に、「古谷集落北側の沢」調査(26.Sep.1993)と「井田井沢」周辺地域の調査(3.No…

佐久の地質調査物語(三山層-6)

8. 三山層堆積構造のまとめ 「ラミナが教えてくれたこと(第1章)」で紹介した、①私たちのフィールド・ネームで「ストライプ層準」や級化層理・ラミナ(葉理)、本章(第6章)で取り上げた、②フレーム現象や粘板岩の礫の位置、そして、前回紹介した、③層内滑り…

佐久の地質調査物語(三山層-5)

7. 林道「大日向-日影線」の三山層 霧久保沢入口(標高943m)と都沢下流部左岸(標高1040m付近)を結ぶ林道「大日向-日影線」が、抜井川の南に敷設されています。林道は、ちょうど2本の高電圧送電線(東京電力)に挟まれた間を、ほぼ等高線に沿うよ…

佐久の地質調査物語(三山層-4)

5.大野沢最上流部の調査から 大野沢の標高1085m付近の橋を渡り、最初の左岸側にある「無名沢」に入りました。大野沢の向斜構造の情報を得る為には、どうしても必要になる位置にあります。しかし、標高1150m二股まで踏査しましたが、全く露頭があ…

佐久の地質調査物語(三山層-3)

4.大野沢支流・1173東沢の調査から 「1173東沢」というのは、地形図の標高表示P1173の東側にあるので名付けたフィールド・ネームです。大野沢でも向斜構造が予想され、その南翼情報がなかなか入らないので、貴重な情報源となる沢でした。本流…

佐久の地質調査物語(三山層-2)

2.大野沢中流部の調査から 大野沢のイオドメ滝から第7沢合流点付近までと、大野沢林道入口~第6沢の地質は、第2章「鍵掛沢断層群」で説明してありますのて、内容を絞ります。下流から見ていきます。【下図参照】 大野沢中流部(断層で接している) 「イ…

佐久の地質調査物語(三山層-1)

三 山 層 と 堆 積 構 造 三山層は、山中地域白亜系・最上位の地層で、群馬県側~秩父地方では、厚い黒色頁岩層を堆積させた最大の堆積盆でした。しかし、第1章「都沢付近の地質」で紹介したように、佐久地域では、混濁流堆積物に特徴付けられる大陸棚のよ…

佐久の地質調査物語(瀬林層-5)

(ウ)大野沢の最上流部・大野沢林道の橋の手前露頭 橋の手前露頭では、【写真-下】のような砂泥互層部分があり、黒色頁岩層に植物化石が含まれていました。シダ植物の茎の部分のように見えました。走向・傾斜は、「N76°W・75°N」と、高角度の北落ちで…

佐久の地質調査物語(瀬林層-4)

7.瀬林層のシダ植物化石について 私たちの調査では、シダ植物化石は、次の5露頭で確認できました。 (ア) 大野沢の入口付近から大上林道沿いの ヘアピンカーブ奥の西側付近までの3露頭、【図-①・②・③】 大野沢(第1沢入口~ヘアピンカーブ付近のルート…

佐久の地質調査物語(瀬林層-3)

6.大野沢支流・第5沢付近の内山層 「ベリンジャー事件」という地質学の悲劇エピソードがあります。化石というものが、大昔に生きていた生物の遺骸であると、認識し始められてきた頃の話です。 著名な博物学者ベリンジャー(Beringer)博士は、石灰岩層から…

佐久の地質調査物語(瀬林層-2)

3.腰越沢の調査から 腰越沢の入口は国道299号線に面していて、すぐに礫岩層が見られます。礫種は、白色~黒色チャートが主体で、花崗岩や、黒色頁岩の直径2~3cmの円礫です。入口から40m入った粗粒砂岩層の泥岩との挟みで、N65°W・20°Nの…

佐久の地質調査物語(瀬林層-1)

第5章 瀬林層と内山層 瀬林層は、特異な層準で、複雑な問題を含んでいました。これは、白亜系の地質発達史から見た時、石堂層と三山層という海進期に挟まれた海退期に当たり、しかも同じ瀬林層でも、複雑な堆積環境から、地域差があったことと関連がありそ…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―4)

6.蛇紋岩礫を求めて 山中地域白亜系の南側は、多くの箇所で先白亜系や蛇紋岩体と断層で接していることがわかりました。そこで、この断層を「抜井川断層」と命名しました。また、南北性の断層(白亜系堆積後の活動)によって切られているので、それ以前に断層…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―3)

5.蛇紋岩と黒瀬川構造帯について 1994年(平成6年)、さいたま市(当時の浦和市)で、地団研埼玉大会が開催され、中・古生界プレシンポジウム『関東山地はどこまでわかったか』が行わました。その成果が、世話人会でまとめられ、地球科学49巻(1995…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―2)

3.中央構造線を挟む領家帯と三波川帯 プレート同士が衝突し、沈み込みにより、地下深部で対を成す変成帯が作られることはわかりましたが、地表に現れ、中央構造線(Median Tectonic Line)という大断層を境に接していることの説明は、不十分です。 【図・下…

佐久の地質調査物語(蛇紋岩帯―1)

1.蛇紋岩についての予備知識 平成8年12月6日、北安曇郡小谷村の蒲原沢(がまはらざわ)で、土石流が発生し、砂防ダム工事をしていた多くの方が亡くなりました。ご冥福をお祈り致します。(合掌) 普段は話題の少ない地学分野ですが、災害のたびに「津波、…

佐久の地質調査物語(軟弱砂岩・後半)

「軟弱砂岩」の枕状溶岩説 軟弱砂岩の正体として、さらに、「枕状溶岩(pillow lava)」ではないかと考えています。実は、白井層後背地の候補地と考えても矛盾しない場所に、枕状溶岩があるからです。【抜井川上流部ルートマップ】を参照。 茨口沢の対岸(南側)…

佐久の地質調査物語(軟弱砂岩の正体・前半)

軟弱砂岩の正体 他の地層と比べ、層厚もわずかな「白井層」なのに、極めて多様な岩相と分級の悪さを特徴とする『白井層の特異性』について述べてきました。その原因を、『茨口沢白井層へ堆積物を供給した後背地は、比較的近い所にあり、ある程度、風化や浸食…

佐久の地質調査物語(白井層・後半)

(3) 砂岩層の岩相変化は、堆積環境を 反映しているのではないか。 軟弱砂岩層と緑色砂岩層は、背斜構造の東西両翼に、それぞれが対応する位置にあります。対応関係が確認できるのは、ここまでですが、西翼のさらに外側にある特徴的な砂岩層の岩相と、その順…

佐久の地質調査物語(白井層・前半 )

白井層の特異性 抜井川の上流部・茨口沢(ばらぐちざわ)には、松川正樹先生(東京学芸大学)が、産出する化石を手がかりに、白井層(模式地は、群馬県)とした地層があります。 私たちは、昭和63年8月12日、松川先生に案内していただき、茨口沢を歩いていま…